「世界の中心で愛を叫んだ獣」感想。

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 小説の感想・紹介です。

 

作者:ハーラン・エリスン 翻訳:浅倉久志 伊藤典夫
出版社:早川書房
文庫:511ページ

 内容紹介:人間の思考を超えた心的跳躍のかなた、究極の中心クロスホウエン。この世界の中心より暴力の網はひろがり、全世界をおおっていく………。現代における”パンドラの箱”寓話を描いてヒューゴ賞を受賞した表題作をはじめ、核戦争後、がれきの山と化したシティを舞台に力で生き抜く少年と言葉を話す犬との友情を描く「少年と犬」など、全15篇を収録。米SF界きっての鬼才ハーラン・エリスンのウルトラ・バイオレンスの世界。
(本書裏表紙の内容紹介から抜粋)

 「…ん?セカチューかい?」と一瞬思ったが、あっちの方が本書をもじったタイトルを付けたらしい。それもそのはずで、本書の奥付を見ると初版発行が、1979年1月31日とありずいぶんと昔だ。
 そのせいか読むのにけっこう骨が折れる。翻訳された年代のせいか、はたまた原作者の癖のせいかは知らないが、ちょっと読みづらい。
 その分「俺は今SFを読んでいるんだ!」、なんてマゾじみた喜びがあるかもしれないがどうなんだろう?(笑)

 読んだ感想としては全編こってりでちょっと疲れた。どの話を選んでも、むき出しの暴力と性愛のお話ばっかり。そしてだいたい救いがない。一話読むごとにこんなに疲れる小説を読むのは初めてかもしれない。

 表題作の「世界の中心で愛を叫んだ獣」について触れておこう。
 どこかで見たタイトルだとお思いの皆さん、ご存じの恋愛小説「世界の中心で愛を叫けぶ」と「新世紀エヴァンゲリオン」の最終話のタイトル「世界の中心でアイを叫んだけもの」はこの小説のタイトルをもじって付けられている。
どっちも全くタイプの違う作品だが、それだけ読み手によって色んな解釈ができる作品なのかもしれない。
 内容としては「こことは違う世界。化学の発展によりどうしようもない理不尽な事だとか、”不幸な運命”といったものを捕獲して隔離する事に成功する」
 それは恐ろしい獣の姿をしていた。
 この獣は決して殺す事は出来ない。
そのため、完全にこの獣の脅威を消すためには、”ここではないどこかよその世界”にこの獣を追放するしかない。
 それに対して反対する男と、獣が追放された先の世界(僕らが生きている世界)でいったい何が起こったか……といった感じ。
 なんとなく『ファイナルファンタジーⅤ』の、エクスデスとガラフを思い出してしまった(ザ・ゲーム脳)
 反対していた男がどうなったかも含めて全く救いというものがない。読了ごやるせなさだけが残り、なんとも後味が悪い。

 なんとなくエヴァの最終話にこのタイトルが使われたが分かる。

 セカチューの方は知りませんが…(笑)

 短編でサクサクっと読めるかと思いきや、一話読むごとにエネルギーがいる。全編こってりなのと、文章がやや手強い。
 それが前書きの時点でなんとなく分かるってのがね……。それでも巻末の翻訳者の後書きによると、これでもハーラン・エリスンにしては前書きが短いらしい。マジかよ!

 こってりとした作品が読みたい人向けです。

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