「ウィンター・ドリーム 氷の黙示録」感想・レビュー ※ネタバレあり。~マッチョ雪原に立つ~

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 今回紹介する作品はこれ↓

 ※お手元に井上陽水の「氷の世界」の楽曲をお持ちの方は、再生しながらこのレビューをお読み下さい。

氷の世界
Universal Music LLC
2015-07-29


製作年:2016年 製作国:アメリカ 101分 原題:「WINTER`S DREAM」

出演:パール・シドゥ、アリエル・ホームズ、ブランデン・コールズ、ケルシー・ワトソン、ブラッド・ポッツ、アン=ソレンヌ・ハット
監督:ジョーイ・カーティス

総評:C
●キャラクター………△、キャラは立ってるが運用に問題あり。作るだけ作って、ただ死なせるだけの奴が多過ぎる

●ストーリー…………✖、ちょっと捻り過ぎたかなぁーて感じ。登場人物達の行動も設定も、コロコロ変わり過ぎていて、支離滅裂に見える。怪物VS特殊部隊を期待していると、裏切られた気分になる(僕はなった)

●カメラ・映像………〇、B級にしてはまぁまぁの出来。雪原は映像が綺麗に撮れていい。
●怪物…………………△、「うーん、怪物は人間の方だったね☆」と言わせたいのだろうか?同情の余地あり。そもそもミュータントを、どんな風に撮りたいのかはっきり決まってないまま突っ走った印象を受けた。

 あらすじ:機嫌2307年。地球に到来した氷河期によって地表は雪と氷に覆われた。
凍り付いた世界の地下で生活する人類は、奴隷としてミュータントを開発し働かせていた。
 ある日最新式のミュータントASH-393が反乱を起こして脱走。
精鋭部隊の<スパルタン7>にミュータントの追跡・殲滅の命令が下される。

《この作品の印象に残ったところ》
●必要以上に複雑なストーリー。
●その複雑なストーリーを、いまいち消化出来てないところ。
●主人公が無能にしか見えない。
●レーザービームの表現がチープ過ぎる。見慣れると意外といける気がする(重症
●「奴らに髪の毛はないはずだ」………おっさんに喧嘩売ってんのか?(゚Д゚)ゴルァ!!

ネタバレ注意

《ブレードランナーin氷河期》
 まるで「怪物VS特殊部隊」の近未来SF・アクション物をうたっているが、蓋を開けてみれば「ブレードランナーin氷河期」とでも言いたくなるようなお話。

 前半はそこそこミュータントの戦闘シーンがあるが、後半から雲行きが怪しくなる
 後半は二転三転して『ブレードランナー2049』みたいに、無駄に難しい話をやりだす。

 作り手の非凡な才能と、幾つかの解析不能な要素によって、『ブレードランナー』はカルト的な名作になりえたのだと思う。
 悲しい事にこの映画には、予算以外にも色々足りてない。
 その結果、哲学的・観念的な言葉と雰囲気だけはあっても、特に深く掘り下げていく訳でもなく、結局はパッとしないSF映画が出来上がって終わり。

 一面真っ白な静かな世界に、複雑な設定と観念的な言葉は、合わない気がする。
 

 「世界は氷に包まれたが、人間は相変わらず自分勝手な事ばっかりやってますよー」
 「過酷な環境で労働力が足りないから、奴隷になる人間型の生き物を作ったよー」
 「そいつらが反乱起こしたよー」
 「将軍の命令でそいつら狩りに行ったんだけど、悪いのは俺たち人間だったよー」
 「そもそも何をもって人間として成り立つか?」
 「ミュータントの方が、身体的にも人格的にも上じゃね?」
 「まぁ色々考えたけど、理想郷目指してミュータントと原住民と一緒に旅立つわ」
 「あばよ!」

 黒幕の将軍と対決するかのような雰囲気だけだして、結局はぶん投げて中途半端な所で終わる。

 本当にそういった<雰囲気>を出すのだけは上手い映画。

 
《いいとこなしの主人公&ストーリー》
 この映画にいまいち入り込めない理由としては、登場人物が主人公含めて自分勝手なバカばかりしかいない点に尽きると思う。
 
 主人公のビショップは愛する妻を亡くした後、いけないお薬にハマってダメ人間街道驀進中。

 そんなビショップの元にかつての上官から招集がかかる。
 精鋭部
隊の<スパルタン7>を率いて、脱走した最新型の人造人間ASH-393を狩ってこいなんて命令を受ける。
 気乗りしないけど軍隊に復帰したビショップだったが、どいつもこいつも勝手なことばっかりやって、ちっとも命令をきかない。
 ビショップもビショップで、命令に服従させるのが仕事のくせに、それをやろうとしてる様子がない。
 さらにビショップを始め隊員は精鋭揃いのはずだが、有能描写が全く無い
 どいつもこいつも、無策でミュータントに挑んで勝手にやられていきます(笑)

 もともと5人しかいないのに、早いペースで脱落していくなーと思っていたら、戦闘パートは前半だけで、後半はよく分からん小難しい話をやり始める

 主人公が無能な上に嫌な奴で、全く感情移入出来ません。
 その割には話の中心にいて、周囲が勝手に「お前はそういう運命だったのだ…」と持ち上げるもんだから、観ていてモヤモヤする

 さらに後半パートで、「ミュータントは実はいい奴だった」て話になるのだが、隊員の心臓を抉ってモグモグ自主規制しちゃってる奴を誰が信用するかw

 物語において人殺しは、必ずカルマを背負うもんなんです。
 ついでに「人を喰う」ってのは「人間じゃないもの=人類の敵=絶対に分かり合えない存在」だってことなんですよ。

 「実はミュータントはいい奴だった」それがやりたいのなら、心臓を喰わせるべきじゃない。

 全体艇に技術的な問題と言うよりは、監督に映画を作る・物語を作るセンスが壊滅的にない気がする。
 なんだか<最低限の暗黙の了解>をことごとく無視しちゃうのは、シリアスな映画では致命的だと思う。
 (そういった<暗黙の了解>を、逆手にとったバカ映画ならギャグとしてありかも)

 とにかく登場人物達の行動に一貫性が見られない。
もしくは「登場人物の行動に一貫性がない」ように見えてしまう=視聴者が話がちぐはぐだと感じる。
と、言うべきだろうか?
 その辺りを見るに、監督自体も撮りたい画はあるが、どんな話にしたいのか最後まではっきりしていなかったのでは?
と疑ってしまう作品だった。

予告編はこんな感じ↓

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