今回紹介する作品はこれ↓
なんだかプロレスラーのリングネームに使われてそうなタイトル。
製作年:2016年 製作国:アメリカ 91分 原題「THE MONSTER」
監督:ブライアン・ベルティノ『鮮血ピエロの惨劇』『ストレンジャーズ~戦慄の訪問者』
出演:ゾーイ・カザン/エラ・バレンタイン/アーロン・ダグラス
【あらすじ】
シングルマザーのキャリーは10歳の娘リジ―と共に、別れた夫に向かっていた。
しかし山奥の道で事故に遭い立ち往生してしまう。
車中で助けを待つ母子を、何かが暗闇から狙っていた…。
●キャラクター………◎、母と娘のキャラクターが丁寧に描写されていた。
●ストーリー…………〇、怪物映画ではなく、親子の絆と少女の漠然とした不安を描いた作品。
●カメラ、演出………〇、よい。演出はホラーをやってるが、画の撮り方はヒューマンドラマ。
●音楽…………………〇、静かだか効果的に使われている。
●怪物…………………〇、あんまり出て来ない。今回は不吉なもの、理不尽な運命の象徴としての出演。いい感じに不気味な着ぐるみ。
※以下ネタバレ注意↓
予告編はこちら↓
例によって予告編と本編があんまりあってない。
まだ映画が完成してない状態で、宣伝会社に予告編の制作を頼むことがほとんどだそうです。
したがって、映画の断片的な素材を基に、予告編を作らざるを得なくなり、本編と色々と食い違うとかなんとか。
《メタファーが多用されている映画》
”THEY ARE HIDING AND WATCHING JUST WAIT AND SEE”
”OH,THERE ARE MONSTERS FOR YOU AND FOR ME”
”怪物はこっそり君を見てる”
”目の前にひょっこり現れるよ”
1903年 子守唄 作者不明
~劇中冒頭より抜粋~
この映画は最近では、珍しくかなり真面目に作られた怪物映画です。
ジャンルとしてはホラー映画なんでしょうが、管理人は「少女が大人になる様を,メタファーを用いて描いた」作品だと思う。
劇中多くのメタファーで登場人物の感情や、物語の行く末を効果的に語っている。
以下↓管理人が気づいた主なもの。
●腕時計を渡す=母親にもう時計は必要ない=死ぬ。
●歌うぬいぐるみ=”子供であるリジ―”を象徴する物。
●ライター=希望の光
●車=子宮の象徴。
●雨=母と子の別れの悲しみ
●暗闇=不安
●怪物=理不尽な運命・死・暴力的な男性の象徴
それらのメタファーと時折挟まれる回想シーンによって、そこらの凡百なホラー映画とは一線を画す作品だと思う。
”怪物の出てくるおとぎ話”であり、妙に文学的な作風である。
個人的には高評価の作品なんだけど、こういった作品ってB級モンパニ以上にニッチと言いいますか、世の中に対して没交渉的な作品かと。
この映画を”モンスターパニック”や、”ホラー”のジャンルに入れて括ってしまうのはちょっと抵抗がある。
だからといって感動系のヒューマンドラマとして売り出せと言われても、それも違う。
なんとも形容しがたい映画です。
これを宣伝し、出来るだけ多くの人の眼にとまるようにしようと思ったら、やっぱり「怪物の出てくるホラー映画」として売り出すのは正しいでしょうね。
怪物の出番は少ないが、映画としては高い所でまとまっているため、退屈はしないと思う。
でもこの作品、ホラー映画じゃないよね?
(大事なことなんでもう一度)
《文学的な作風》
この映画では怪物は<肉体をもった凶暴な生き物>である他に、<人間が誰しも持っている不安や恐怖>もしくは<死>であり、<逃れられない運命>の象徴として登場します。
そういったもののメタファーであるから、劇中でどこに隠れていても見つかってしまうし、たとえ車で逃げようが、当然の様に追いついて来るのも納得がいく訳です。
「怪物は光に弱い」、「怪物な
んていないわ」なんて台詞も、この怪物が<実体のない影>の象徴である事を表わしているのではないだろうか?
そして怪物を退治した後に、「少女は夜の闇を抜け出すことに成功する」
そういった物語が、いつもの「怪物の出てくる説教映画」のようである。
もしくは、こんな風にも考えられるのではないだろうか。
そもそもこの映画は「思春期の少女がみた悪夢」、「強いストレス下に置かれた少女の心象風景」を、ホラー映画テイストで表現しただけなのかもしれない。
生活能力のない母親から、父親の元に引き取られる少女の<言い知れぬ不安>を描いた作品なんだろうなー、という事はなんとなく分かる。
じゃあ、あの怪物は夢だったのか?
実体のない悪夢だったのか?
その辺が、観た人によってどうとでも解釈できて、面白いのでなないだろうか?
しかし、こういった「観た人の解釈に任せる」ホラーって、だいたい賛否両論の<否定>的な意見が多いような気がします。
今回の記事のタイトルを付けた時は「なんかふざけた事を書いたろ(゚∀゚)」と思っていたのですが、全く思いつかなかったので、こんな感想文になってしまいました。
この映画なんだか妙に、管理人の琴線に触れましてね……。
母親役のゾーイ・カザンもリジ―役のエラ・バレンタインも非常によかった。
エラ・バレンタイン演じるリジ―ちゃんが、本当に健気で可愛いんですよ。
対してゾーイ・カザン演じる母親のキャシーが、本当に駄目な女でね……劇中こやつに対してけっこうイライラする事が多い。
【感想まとめ】
評価:B
●全体的に高い所でまとまっている。
●ホラー映画だが、ホラーではない。
●スタッフ欄に狼の名前まで載ってる。
●リジ―は可愛い。
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