『ジュラシック・パーク』公開後、遺伝子工学によって太古の恐竜が現在に蘇る&パニックのパチモン映画が多数誕生した。
しかし、意外な事に『ジュラシック・パーク』の、プロットそのものを盗用した作品は少ない。
今日皆様に紹介するのは、そうした”レア物”の一つである。
そんな訳で今回紹介する作品は「サーベルタイガー・パーク」です。
なお配給は、サーベry…ではなかったライオンズゲートです。
ちなみに名作『ジュラシック・パーク』のプロットをそのまんま使っているが、面白いわけではないのでそこんとこよろしく。
目次
データー・スタッフ・キャスト
「サーベルタイガー・パーク」
製作年:2005年 製作国:アメリカ
上映時間:92分 原題:「Attack of the Sabretooth」
監督:ジョージ・ミラー
製作:フィル・ボタナ
出演:ロバート・キャラダイン/ブライアン・ウィマー/スティシー・ハイダック/ラウィリ・パラテーン/ニコラス・ベル……etc.
備考:監督は『マッドマックス』の監督と同姓同名だが、たぶん関係ない。
予告編
「サーベルタイガー・パーク」:あらすじ
「フィジー諸島の島の一つ、バラローラ島に「プライマル・パーク」を建設した投資家のナイルズ。遺伝子工学を用いて復活させた”サーベルタイガー”を観光資源の目玉にしようと企む。
しかし、パークで事故が起こり、サーベルタイガーが檻から逃げ出してしまう……」
「サーベルタイガー・パーク」:感想(ネタバレ有)
さて、本作品は「遺伝子工学によって現代に蘇った恐竜(サーベルタイガー)を使って、金持ちが一大テーマパークを作ろうと計画する。しかし、そこで起こった突発的なトラブルに、産業スパイの暗躍も加わって、”夢のテーマパーク”は一転、”悪夢”と化す」
…と、いった『ジュラシック・パーク』の”恐竜”の部分を”サーベルタイガー”に置き換えただけの作品である。
……発想が安易といったレベルじゃねーぞ!!
ヘッポコ過ぎる物語の起点。
その問題となる”トラブル”の発生のしかたが、管理人が観てきたB級作品の中でも断トツでバカらしいものだ。
さて、物語開始早々、今回の騒動を引き起こす原因となる男が、画面に登場する。
この「プライマル・パーク」の警備員のサケアジ氏である。
なんだか物々しいフェンスの脇にどっしりと腰を下ろしたサケアジ氏。尻のポケットからおもむろに取り出したのは「erotica」なる、何ともストレートなタイトルのエロ雑誌。
※erotica=主に「好色本」と訳される
そこからエログロビアを切り離し、ゆっくりと楽しもうとした矢先、無情にも鳴り響くトランシーバーの音。
「定期的に報告をよこせ」
、とのたまう同僚に対し、
「昼食の時間だ(意味深)」
と、答えるサケアジ氏。
だが、その時、一陣の風が吹き、エログラビアを宙に舞わせた。
風に乗ってフェンスの向こう側へ行ってしまうエログラビア。
—!!—
一瞬何が起こったか理解できなかったサケアジ氏だったが、我に返ると迷うことなく、セキュリティゲートの向こう—残忍な肉食獣の領域—へためらいもなく入っていった。
さらに吹いた風で、木々の生い茂った奥地に飛ばされるエログラビア。
………エロの為なら危険な生物が闊歩するエリアにも躊躇うことなく侵入するその姿に、同じ男として感動の涙を禁じ得ないが、個人的には絶対にマネしたくない。
つーか、仕事中にエロ本を読むなよw
…まぁ、命あっての物種って言うしね。
↓
案の定、血祭りに上げられるサケアジ氏。
…かくして、B級映画史上最もヘッポコな理由で、血に飢えた野獣が狩場に放たれたのだった…。
ここでオープニングクレジットに突入。
もうすぐオープンを控えた「プライマル・パーク」では、オーナーであるナイルズ・グリーンの手によって出資者を募るパーティーが開かれていた。
出資者を募る他に、ナイルズにはもう一つの目的があった。
同じ投資家で義兄でもあった、グラント氏をぎゃふんと言わせることだ。
(※余談だが、本家の『ジュラシック・パーク』のサム・ニール演じる主役の恐竜博士の名前が”アラン・グラント”である)
(↑余談だが、原作では映画よりも金に汚い性格のハモンド。その他の描写も爆撃される恐竜達と、映画よりも全体的に生臭い)
この集まった出資者候補の中に、父親の名代で参加したロビー達大学生の姿があった。
この本家の『ジュラシック・パーク』では”ハモンドの孫”にあたるボンクラ大学生がよりにもよって、凄腕のハッカーときたから、後はもう予想通り。
このボンクラどもが、自分たちのゲームの都合で「プライマル・パーク」のシステムに侵入したから、さあ大変!
一度は飼育員の笛の音で檻に戻ったサーベルタイガー達が、また脱走してしまう。
(この”おっさん飼育員”の笛の下りっているんですかね?)
…さっきから、ナイルズ氏のついてないエピソードばっかり紹介している気がする。
この様に、なんともヘッポコな理由で、科学技術の粋を集めて運営されていた”パーク”が機能不全に陥る様が描かれている。
いくら科学が進歩してもヒューマンエラーばっかりは、どうにもならないのである。
(あと性欲)
そういったハイテクが、ヒューマンエラーがきっかけで、ガラガラと崩壊していく過程が、描かれているが、本家の「ジュラシック・パーク」では、説得力のあるドラマとして構成されていたが、プロットをパクった本作では、最初から最後までヘッポコである。
その辺の開き直りっぷりを楽しもうw
ナイルズ・グリーン氏の人生最悪な一日
前章では警備員のサケアジ氏にフォーカスして、「プライマル・パーク」が崩壊する過程を紹介したが、この章では「プライマル・パーク」のオーナーであるナイルズ・グリーン氏の目線からこの映画を見てみよう。
このナイルズ・グリーン氏、本家の『ジュラシック・パーク』で言うとこのハモンドに当たる人物だ。
いわゆる「いけ好かない金持ち」キャラなんだが、見方を変えるとかなり可哀そうな人物、本作での一番の被害者である。
まず、「いけ好かない金持ち」キャラが弱い。
なぜならライバルであるグラント氏が嫌な奴過ぎて、視聴者のヘイトが分散してしまう。
このグラントからナイルズに浴びせられる罵詈雑言はなかなか酷いものがあって、ちょっと立ち直れなくなりそうな強烈なヤツがチラホラ。
ついでに、このグラントの連れていた女が実は産業スパイ。
『ジュラシック・パーク』のネドリーに当たる人物が、大学生のロビーとこの女に分裂しているわけだ。
さらに、部下が酒飲みで勤務中にエロ本読みだす警備員だとか、勤務中にSMプレイしだす警備主任(ヒロイン)とその恋人(主人公)だとか、危機意識のない使えないオカマだとか、凄いメンバーばっかりなのも同情したくなる。
ついでに、劇中でやった悪行が、犠牲者の家族に大金を積んで裁判を遅らせようと画策したぐらいなんだよね。ちなみに、犠牲者の家族と裁判する下りは、小説版の「ジュラシック・パーク」にもあった描写です。
仕事する気が全く無い部下と、かなりキツイ性格の元義兄に振り回されるは、頭空っぽの大学生に遊び半分でコンピューターに侵入されるは、「いけ好かない金持ち」ではなく、ただの「運の悪い人」になっちゃってるから、あんまり憎めないんだよね。
ナイルズから見たら艱難辛苦を乗り越えて憎きグラントにやっと一泡吹かせてやれるとこまで来たら、部下のエロ本で全てが台無しになるのだから、たまったものではない。
オチとして、やっぱりこのナイルズ氏は酷い最期を遂げるわけだが、悪いのはだいたい他の登場人物なのがなんとも言えない。
怪物そっちのけで、変な登場人物ばっかり見せられた映画だった気がするなー(TДT)
—結びに—
今年、2018年の夏にいよいよ『ジュラシック・ワールド 炎の王国』が公開される。その前に人知れず製作され、人知れずDVDリリースされ、すっかり観賞する人がいなくなったDVDを、ひっそりと追悼レビューしてみた。
アサイラムが有名になる前の、この手のB級モンスター映画が、B級映画なりに真剣に、コメディタッチのゆる~いノリではなく、あくまでもシリアスな作風で作られていた事も時々でいいから思い出して欲しい。
決して面白いわけではないので、そこんとこくれぐれもよろしく。
おまけ
本作は、パニックに陥る主人公一行とは別に、パーティーに招待された金持ちたちは終盤の10分を除いてひたすら、パーティーに興じている。
それらのシーンが、時折アイキャッチの様に流れてくる様が、何とも言えない感じを醸し出している。
この映画どういったわけか、無駄にエキストラを雇ったり、ホテルを再現してる割には、CGに金を掛けない、ハイテクのコントロールルームが、モニターが数台置いてあるだけの事務室だったり、建物の入り口がハリボテだったりと、よく分からない金の使い方をしてる。
あとは、真剣にやってるが故に却ってチープになってるシーンが多く、笑い所には事欠かない作品だった。
【感想まとめ】
●キャラクター………〇、B級映画の登場人物にしては非常にいい。全体的に自分の仕事を真剣にこなす気はない人物ばっかりである。
●ストーリー…………△、見事に『ジュラシック・パーク』のパクり。ここまで堂々とパクるとちょと感動する。
●カメラ………………〇、昔懐かしの「真面目に作ったB級ホラー」といった趣があっていい(※面白いとは言っていない)。画面はちょっと暗い。
●怪物…………………△、CGは浮いている。しかし製作年を考慮すると当時ではマシなクオリティ。
●怪物が逃げ出す下りが酷い。
●登場人物は変な奴ばかり。
●「ランチタイム」に何をやってんだか……。
●サーベルタイガーだけで客は来るのだろうか?
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