今回紹介する作品は「寄生獣Z」です。
※日本版が見つからなかったため、海外版のパッケージです。
この作品に限らず、アサルトワンが配給している作品はAmazon、楽天、YouTubeで見つからない事が多いです。
作品情報・スタッフ・キャスト
製作年:2016年 製作国:アメリカ
上映時間:87分 原題:「On The Brain」
監督:ケヴィン・ヴァン・スティーブンソン
出演:ダニー・ハンセン/シェニク・テイラー/シャノン・フレデリソン/ジョナサン・カゼンズ
予告編
「寄生獣Z」:あらすじ
砂漠に囲まれた町ゴールデン・トーチに都会から新人の保安官ケリーがやってくる。
しかし、ケリーが赴任した途端に、街では不可解な事件が連続で起こる。
捜査を開始するケリーと、ケリーの恋人で医者のマリアナ。
二人は、原因を突き止めるがその時、すでに街には謎の感染症が広がっており……。
「寄生獣Z」:感想/ネタバレ有
さて配給会社はかのアサルトワン。
『JURASSIC EARTH(恐竜惑星)』や『ディープ・インセクト』のように非常に灰汁の強いB級映画ばっかり出してる配給会社である。
配給会社の特徴を語る上で、あきらかにZ級の『JURASSIC EARTH(恐竜惑星)』や、エド・ウッドを意識して「最低映画」に仕上げた『ディープ・インセクト』は最適ではないだろう。
よってこの作品が、管理人にとってアサルトワンを語る上での重要な材料になってしまうが、その判断は正しいのだろうか?
うーん、もうJ.V.Dのディープ・レッドレーベル程ではないが、あっち系のレーベルだという考え方でいいんだよね。
(誰にも届かない魂の問い)
アサルトワンがおくる、寄生虫ゾンビ映画。
そんな訳で感想を書いていきます。
麻雀で例えると、まずアサルトワンで3翻、「日本語吹き替えなし」で1翻、さらにパチモンタイトルで2翻、あわせて6翻ぐらいの点数を振り込むぐらいの覚悟で観賞開始。
(要は大ダメージ覚悟ってこと=ハードルを限界まで下げて観賞)
内容的には、やや文学のかほりがする寄生虫・感染物。
まずは、ざざっと映画の流れを書いていきます。
地図にも載ってないような小さな町ゴールデン・トーチ。
主人公は最近この町に赴任したばっかりの保安官ケリー。(ん?ケリー?嫌な予感がする)
(画面には、「ハリウッド映画における寂れた町」のアイコンが次々に映し出される、柵の壊れた牧場、放置気味の畑、畑に放置されている耕作機械、荒れたボロい建物など)
ある日町の雑貨屋に寄ったケリーは、雑貨屋の主人と郵便配達員が突如として理性を無くして暴れ出す事態に遭遇する。
一人はケリーに射殺され、もう一人は「SOMETHING‘S IN MY HEAD(頭の中になにかいる)」と言い残して自殺してしまう。
よそ者であるケリーを快く思っていない、権力志向の強い町長(おばちゃん)は、ケリーから銃とバッチを取り上げる。それでいてケリーにこの事件の捜査を命じる。
さらに町の住人の女性から「夫が動かない」とのSOSが入るが、ゴタゴタしている内に女性は家に帰ってしまう。
一夜明けて女性は凶暴化した夫に殺害され、夫はケリーの同僚に撃ち殺される。
これはただ事ではないと確信したケリーは、ケリーの恋人で医者のマリアナと一緒に捜査にあたる。
しかし、町長が経営するレストランで食事をしていた道路工事会社の営業マンが凶暴化→射殺される。
マリアナはレストランで出されている肉が怪しいと疑うが、町長は頑として認めない。
さらにあろうことか町長はケリーの口を塞ごうとする。
ここに射殺された営業マンの奥さんのアン(ちょっと前まで都会にいたケリーと関係を持っていた)まで絡んできて、事態はますます混迷を極める。
さらにケリーも感染している事が分かる。
マリアナの研究の結果、感染した男性は女性の生理の臭いに反応して凶暴化していた事が判明する。
そのため、薬剤をセットした呼吸器を付ければ、とりあえず理性を保っていられる事も分かる。しかし、ケリーは町長に監禁されてしまう。
マリアナはアンと一緒に、町長の元に向かう。
果たしてケリーは助かるのか、そして感染は止められるのか…といった内容です。
正直、ゾンビ物や寄生生物モノとしてはさっぱり面白くないです。
感染者は10人にも満たないぐらいで、特に派手なドンパチも格闘シーンもない。
また感染源も最初からなんとなく分かっている為、原因究明のためのドラマも弱いです。
全体的にこじんまりとした話。
一番のグロシーンは終盤出てくる、「レストランの厨房にあった虫の湧いた生肉」
一番ホラーなのは、権力志向の強い町長が銃を片手に脅してくるシーン。
一番怖いのは女同士のドロドロしたところ。
ホラー映画としては「コレジャナイ」感が凄かった。
しかしながらケリーの置かれた状況が、
「話が通じない上司、話を理解してない同僚、話をする気がない恋人、話をややこしくするつもり満々の元カノ」
、という大変ヘビーなもので同情を禁じ得ない。
コレ、胃が痛くなるやつや……。
《文学的?》
この映画はどうやら原作小説があるらしい。
『危険な季節』という小説らしい。
確かに内容としては、やや文学のかほりがしないでもない。
なんと言いますか「姦淫、自殺、不貞、強欲、欺瞞」といった、キリスト教的原罪のお話なんでしょうね。
特に牧師が発症して、ウエイトレスの姉ちゃん襲った上に、自殺なんて流れはその辺のテーマが最もよく出ていたんじゃないかと思う。
感染した男が「頭の中に何かいる」と言い残して自殺する。
その台詞は寄生虫の事を指しているだけではなく、「人間の心の中に邪悪なものがある」という事を表わしているんじゃないかな?
それに対して、寄生虫に感染していない町長が事件を誤魔化すために、ケリーを亡き者にしようとしたり、アンが不倫していた事を描きながら、「罪ってなんなの?」みたいなお話だったんだろうという事がなんとなく分かる。
その原作小説を読まずに評するのは、あんまりフェアじゃないだろう。それでも映像化しない方が、良いタイプの小説なんじゃないかね?
フランツ・カフカの『変身』てあるじゃないですか。
あれは文章だから<主人公がある日目覚めたら巨大な毒虫になっていた>ことについて色々な解釈が生まれるわけでしょ。
もしあの小説に毒虫の挿絵を入れてしまったら、イメージが固定されてしまう。
(実際にそんな表紙にされた事があり、物凄く揉めたとかなんとか)
それと同じように映像化したら、却ってよくない作品だったんじゃないかと思う。
かなり微妙な作品なんで、観賞は旧作になってからでいいと思う。
総評・感想まとめ
総評:♡♡ 2/10
●キャラクター………〇
・キャラは立っている。ただし、不愉快な人間しか出てこない。
・もうちょっと「報・連・相」をしっかりやれと言いたくなる奴が多い。
●ストーリー………△
・やや説教臭く、文学的な内容だった。
・↑あんまり映像化に向いてないお話のような気がする。
●カメラ・演出とう………△
・撮り方は、最低限のクオリティはあったような気がする。
・ただし、演出とうに難あり。
●怪物……△
・ちょっとメイクした人間。
・虫が皮膚の下をはいずる様はCG。あんまり出番がない。
●その他・印象に残ったところ
・全体的にこじんまりとした話。
・ケリーの状況に同情する。
・真面目な作品なのが却って辛い。
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