世間では「100日後に死ぬワニ」なるものが流行っている(いた)らしいが、「ワニ? 90分後には死ぬよね?、むしろワニどころか登場人物のほとんどが死ぬよね」と思ってしまう層にお勧めした映画を紹介しよう。
そんなわけで、今回紹介する作品は「マンイーター」です。
目次
作品情報・スタッフ・キャスト
「マンイーター」
・製作年:2007年
・製作国:アメリカ/オーストラリア
・上映時間:99分
・原題:「ROGUE」
・監督:グレッグ・マクリーン:「ウルフクリーク 猟奇殺人谷」「ミック・テイラー」
・製作:デヴィッド・ライトフット ・製作総指揮:ボブ・ウェインスタイン
・脚本:グレッグ・マクリーン ・音楽:フランソワ・テータ
・出演:ラダ・ミッチェル/マイケル・ヴァルタン/サム・ワ―シントン/バリー・オットー/ミア・ワシコウスカ/キャロライン・ブレイジャー/ジョン・ジャラッド……etc.
※監督は、「ウルフクリーク 猟奇殺人谷」「ミック・テイラー」のグレッグ・マクリーン。本作と同じく、オーストラリアを舞台としたホラーを撮っている。オーストラリアのDQNを撮らせたら天下一品。
主演に「サイレント・ヒル」のラダ・ミッチェル。共演に「ターミネーター4」のサム・ワ―シントンに、「アリス・イン・ワンダーランド」のミア・ワシコウスカと、この手の映画にしてはかなり豪華。
ただし、一番演技の上手いのは犬です。
予告編
「マンイーター」:あらすじ
「アメリカ人旅行記者のピートは、仕事のためにオーストラリアを訪れる。
記事のネタ作りのため、現地の野生動物見学ツアーに参加する。ツアーの目的地まで進み、いよいよ引き返す段階になった際、信号弾が打ち上げられるのを目撃する。
ルールにのっとって、引き返さずに確認に向かう一行。しかし、信号弾が打ち上げられた地点で一行が見たものは、無残に破壊されたボートの残骸だった。
危険を感じ、すぐに引き返そうとするが、“何か”が船に攻撃を仕掛ける。
船長のケイトの判断で、近くの中州に避難する一行。
事故の責任と今後の対応を巡って言い争う中、観光客の一人が、音もなく忍び寄ってきた“何か”に連れ去られて……」
↑この手の映画でお約束の「人里離れた場所にやってきた一行が、凶暴な野生生物に襲われる」という、使い古されたプロットで作ってある。製作は2007年と少し古い。そのため、最近の展開の早いホラーに慣れてしまっていると退屈に感じるかもしれない。
途中でソリッド・シチュエーションホラー風味になったりと、なかなか見応えのあるワニ映画である。
「マンイーター」:感想/ネタバレ有
この手の映画にしては、金がかかっている方だと思う。(それでも低予算であることには変わりないが……)
「ターミネーター4」でブレイクするサム・ワ―シントンも出ているが、清々しいまでにわき役です。豪華なメンバーだと思うか、「もったいない」と思うかはあなた次第。
まぁ、両方ですね。
キャラクターにオーラがあるのと、演技がまともなのはありがたい。
怪物が出てこないシーンが面白いのは、いいモンパニですよ!
みどころ①:記事を書く方が、記事に載ってしまう。
主人公を含めて登場キャラクターがこの手のホラー作品の中心をはずして作ってある。テンプレ通りのキャラクターとは、異なる行動をし、結果として意外な人物が生き残る映画になっている。
主人公がいまいち影が薄いのは、彼は旅行雑誌の記者であり、基本的に傍観者側なんですよ。それは、序盤にガラの悪い店主が営んでいるカフェの壁にづらりと並んだ、ワニに襲われた犠牲者の記事を眺めるシーンでほのめかしている。
物見高い旅行者であって、記事を書くほうであって、記事に載るほうではない。そんな主人公が、遭難事件・ワニ襲撃事件に巻き込まれてしまい、結果としてワニを退治したヒーローとして紙面を飾ってしまう皮肉。
そういった「巻き込まれ系主人公」であるため、ホラー映画の“ヒーロー”ポジションの割には、線の細い頼りない男に描かれている。
あくまでも都会派のインテリであり、大自然の中にいるのがイレギュラーな存在で、サム・ワ―シントン演じる地元のDQNとの対比が際立つ。
みどころ②:地元のDQNにも、いろいろとあるんだよ!
監督のグレッグ・マクリーンは、「ミックテイラー」シリーズを撮っているのだが、オーストラリアの「貧乏白人」・DQNを撮るのには定評がある。
地元の「パッとしない」奴らのルサンチマンを描くのがうまい。ともすれば、必要以上に嫌な奴なってしまったり、シリアスな「社会派」のテーマになってしまいがちだが、グレッグ・マクリーン監督の描くDQNは、塩加減が絶妙なんですよ。
地元でくすぶっている、ろくでもない奴らにも、仲間はいるし地元愛はあるしで、なんとも憎めない愛嬌のあるキャラクターに仕上げている。
彼らからしてみれば、自分たちの住んでいる場所にどかどか上がりこんで、好き勝手騒いでいく観光客は、好きにはなれない。だからといって、来てもらわないと現金収入がなくなるし…と、まぁ複雑な感情を抱いている。
このサム・ワ―シントン演じる地元のDQNは、ラダ・ミッチェル演じるケイトに惚れているわけだ。惚れている女が観光客のご機嫌をとっているのも気に食わない。
そんなわけで、最初に出て来た時は、とにかく嫌な奴だし、ワニの襲撃に巻き込まれてから、急にいい奴を通り越して“ヒーロー”の様にふるまう。
とにかく、いろんなことにイライラしているんだけど、本人はそのイライラに気づいていない、「単純なんだけど複雑なキャラクター」として描かれていて、その辺が何とも言えない味があっていい。
ついでに、原題の「ROUGE」=“ごろつき”の意味するのが、ワニの事であり、ワニからしてみれば「ナワバリに侵入してきた奴ら」=観光客たちのこととなる。
それは同時に、観光客からみた地元のDQNと、地元のDQNからみた観光客の対立構造がそのまんま反映されている。
そういった点が、なかなかパンチが効いていて面白かった。
「遭難した観光客が、巨大なワニに襲われる」なんて、使い古されたプロットなんだが、地味によく出来ている作品だ。
出演者の演技がしっかりしており、ワニの襲撃シーン以外も観ていられる作品である。この手の「90分後に死ぬワニ」作品が好きな人は、一度みてみるいい。
とりあず、某「何日後に死ぬワニ」も「爆破オチ」を採用しておけば、特定のクラスターには支持されたんじゃないだろうか?
ワニとサメは爆発物なんだぜ。
総評・感想まとめ
総評:♡♡♡♡♡♡♡ 7/10
●キャラクター………○
・キャラクターが意外な行動をする。
・主人公がやや薄味だが、「傍観者・物見高い観光客目線のキャラクター」と考えるとこれくらいでいいと思う。
●ストーリー………○
・この手の映画の王道プロットで作られている。
・記事を書く方が、記事に載ってしまうオチは皮肉が効いていてグッド。
●カメラ・演出とう………○
・基本的なことは出来ているので、襲撃シーン以外も観ていられる。
・中盤”ソリッド・シチュエーションホラー”みたいになる。
●怪物……◎
・CGの出来はいい。動き方も迫力がある。
・↑ただし、怪物がなかなか出てこない”クラシックスタイル”のホラーのため、最近の展開が早いホラーに慣れていると物足りないかもしれない。
●その他・印象に残ったところ
・犬の「えっ!?僕のこと?」みたいな顔がいい。一番演技していたんじゃないか?
・ミア・ワシコウスカが、ちょっと前に話題になった、某環境保護少女に見えなくもない。
・”デスロール”が見えて満足。
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