何をトチ狂ったのか、「シェイプ・オブ・ウォーター」に続き、またもや「半魚人もの」を、気合を入れて作ってしまったようだ。(カエル人間ものとも言う)
そんな訳で、今回紹介する作品は「コールド・スキン」です。
目次
作品情報・キャスト・スタッフ
「コールド・スキン」
・製作年:2017年 ・製作国:スペイン/フランス合作
・上映時間:106分 ・配信:ハピネット
・原題:「COLD SKIN」
・監督:サヴィエ・ジャン:「ディヴァイド」「ヒットマン」
・製作:オルランド・ペドレゴサ/デニス・ペドレゴサ ・撮影:ダニエル・アラーニョ
・原作:アルベール・サンチョス・ピニョル ・音楽:ヴィクトル・レイェス
・出演:レイ・スティーブンソン/デヴィッド・オークス/アウラ・ガリード/ウィンズロウ・イワキ/ジョン・ベンフィールド/ベン・テンプル/イバン・ゴンザレス……etc.
※クリーチャー製作には、「パンズラビリンス」のチームが当たっている。ギレル・デル・トロも認めたクリーチャー製作チームが、半魚人・カエル人間を作っている
監督のサヴィエ・ジャンは「セル」や「ザ・ホード 死霊の大群」とうのクリーチャーものを過去にも撮っている。
予告編
「コールド・スキン」:あらすじ
「時代は第一次世界大戦前の1914年9月。とある夢破れ、人生に疲れた青年(デヴィッド・オークス)が、絶海の孤島の気象観測員として赴任してくる。島には彼を除けば灯台守のグルナーが暮らしているだけだった。「前任の気象観測員アルドールはチフスで死んだ」とグルナーから、聞く青年。
島の灯台は逆茂木だらけで、要塞のようになっていた。その事に疑問に思う青年だったが、その夜彼の寝泊まりする小屋に、何かが襲い掛かってくる。そいつらは、ヒレとエラをもった魚やカエルと人間を合わせたような奇妙な姿だった。
灯台のグルナーに助けを求める青年。グルナーは一緒に住むことを許可するが、代わりに青年にも、謎の生物との戦いを強いる。グルナーは青年を「フレンド」と呼ぶ。
今日も夜がくる。そして奴らが海から上がってくる……」
●原作小説は「冷たい肌」 著:アルベール・サンチョス=ピニョル
何度も実写化の話が持ち上がっていたが、なかなか形にならなかった。
そんな作品が、この度ついに映画になった。
「コールド・スキン」:感想/ネタバレ有
若くして人生に疲れ、隠遁を決めた「私」。
やってきた絶海の孤島は、誰もいない荒れ果てた小屋、病気で死んだ前任者、逆茂木だらけの灯台。
毎晩繰り返される「戦い」
逃げ出した先は、やっぱり「地獄」だった…。なんて、キリコ・キュービーも、ガッツも真っ青なお話だ。
若くして、合法ニート生活を満喫しようとしたら、やっぱりあてが外れた物語である。
ストーリー:「戦え!」
島に上陸して、逆茂木だらけの灯台にびっくりする、主人公。
職場の灯台には、自分と交代で島から去るはずの前任者は、おらず、愛想の悪い偏屈な灯台守・グルナーが寝ているだけ。グルナーは言う「前任者はチフスで死んだ」と。
そんなこんなで、一日目の夜が終わる。
その夜何かが、主人公の寝泊まりしている小屋を襲撃してくる。
小屋の火を放って、灯台に避難する主人公。
そんな主人公を「フレンド」と呼ぶグルナー。
グルナーは言う「戦え!」と。
そして、毎晩のように海から灯台に押し寄せる、魚の取人間を合わせた様な生物の群れ。
奴らは倒した仲間の死体を共喰いする。その様子に嫌悪感を覚える主人公。
これは、ある意味人間社会の縮図であり、そういったところも、主人公が若くして隠遁を決めた理由かもしれない。自分が背を向けて逃げ出した、人間社会の嫌なところが、再び目の前に現れる。
そんな自分に対して、「戦え!」と、咤してくるこの髭ダルマは、誰だ?
毎晩、毎晩繰り広げられる、異形の者との死闘。
この戦い方が、ある意味とても白人らしいというか、植民地支配のメタファーみたいに描かれる。
暗闇で光を放つ灯台は、彼らが植民地支配の口実に使った啓蒙主義=「野蛮人を教化する」であり、そこに押し寄せる異形の者はなんだろうか。
さらに、後半主人公は、ある出来事がきっかけで、獣だと思っていた連中にも、知性と情愛があることに気づいてしまう。
それと、同時に奴らからしたら「自分たちの方が怪物である」という、結論に達するのに時間はかからなかった。
そんな主人公とは正反対に、グルナーや奴らに対する憎悪を募らせていき、奴らを大量虐殺するために、沈没船から爆薬を引き上げる。
夜はふけ、最後の戦いの幕が上がる……。
考察:「愛を……」
本作品は、四六時中戦っているのだが、同時に「愛の物語」でもある。
冒頭、夢破れ、人生に嫌気がさした青年は、絶海の孤島にやってくる。
島に向かう間、船長の台詞。
「何から逃げて来た?」
「海に来るのは逃げて来た奴だけだ」
そう言いながらも、若くして失望を味わっている主人公に、優しい船長。
そんな船長と別れて、やってきた絶海の孤島で待っていた、偏屈な男・グルナーと、謎の生物・アネリス、そして死闘。
戦いを通して、結ばれていく、グルナーとの友情と、半魚人女アネリスとの奇妙な関係。
そして、奴らが知性と情愛を持った生き物だと、気づいてしまった主人公と、グルナーの間には、決定的な亀裂が生じる。
最後の戦いの最中、主人公はある秘密を知ってしまう。
去っていくグルナー。
灯台で眠っていた主人公を、起こすもの。それは、交代要員の新しい観測員と、その案内をする軍人たちだった
士官はいう「戦争が迫っている。もう今までのお気楽な任務ではない」
続けて問う「名前は」
そして、名乗りを上げる主人公……と、ここで結局視聴者は気付くだろう、この「私」が最初から最後まで、「名無し」だったということに。
画面の隅にチラチラ映る本。フレイザーの金枝篇。神殺し・親殺しを集めた本。
主人公は「名前」を捨ててしまう。「名前」=親・神からもらったものを捨てて別人になる。
自分の事を「フレンド」と呼んだ男は、もういない。
名前を捨て、友も敵も去った。男は灯台のバルコニーに出て、海を眺める……。
う~ん、やっぱりかなり文学的な内容だぞ。
「一人称の小説をどうやって、映像化するか?」という、課題に対して、大正解に近いんじゃないかな?
怪物とのドンパチシーンも多いので、モンスター映画が好きな人は、要チェック。
とりあえず、モンスター映画は、諸々のクオリティーが最低限度を満たしていたら、「傑作」と呼んでも、差し支えないだろう。
悲しいが、それは事実だ。
そんな事実に対して「戦え!」or「愛を…」と思うかは、あなたの自由だ。
総評・感想まとめ
総評:♡♡♡♡♡♡♡♡♡ 9/10
●キャラクター……◎
・画面上には、少ない人物しか出てこない。その反面、一人一人はかなり濃い。
●ストーリー……〇
・「人里離れた場所に引っ越してきた主人公が、怪物に遭遇する」といった、モンスター映画の基本プロットを下敷きに、やや文学的で難解な話が展開する。
●カメラ……〇
・この手の作品に舌は金がかかっており、かなり綺麗。
・画面の明るさを、暗めに調整しており、それが作品の陰鬱な雰囲気と、夜の闇の美しさを際立たせている。
●怪物………◎
・造形は非常に出来がいい。製作は有名どころが手掛けている。
・半魚人orカエル人間である。
・CG、特撮のできもよく、数や登場頻度も多い。
・しかし、まぁ「モンスターパニック」ではないよね、この作品。
●雑多な感想
・展開が早くて観ていて飽きない。
・「名前のない存在」になるのがどういったことかを描いている。
・原作小説は、文庫化されておらず高い。
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