今回紹介する作品は「シン・ジョーズ」です。
この酷い邦題は、「シン・ゴジラ」の便乗作品であることを物語る。
ちなみに”Sin”は「罪」みたいな意味。
こういった「罪深い」作品が出るのも、我々、日本人サメ映画ウォッチャーのせいである。
おおいに反省すべきである。
(自分に特大ブーメラン)
データー・スタッフ・キャスト
「シン・ジョーズ」
・製作年:2016年 ・製作国:アメリカ
・上映時間:85分 ・原題:「ATOMIC SHARK」
・監督:グリフ・ファースト監督/『ゴースト・シャーク』『新アリゲーター~新種襲来~』
・製作:ダニエル・マーチ
・出演:レイチェル・ブロック・スミス/ジェフ・フェイヒー/デヴィッド・ファウスティーノ/ボビー・カンポ/マライア・ボナー・イザイナ・ラボード……etc.
予告編↓
「シン・ジョーズ」:あらすじ
サンディエゴのビーチに奇妙な魚の死体が、立て続けに打ち上げられる。ライフセーバーで海洋生物学者のジーナが調べたところ、魚は放射能によって汚染されていた。さらに「赤く光るサメ」の目撃情報まで出る。ジーナと同僚のカプランは、ビーチの閉鎖を進言するが、上司は取り合わない。
そんな中「赤く光るサメ」の犠牲者が次々に出てしまい……
感想/ネタバレ有
「白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよう」
かつてそんな風に詠んだ人がいる。
空の淡い青と海の濃い青。その間を風に乗って舞う白い鳥。そんなコントラストがはっきりした美しい、それと同時に哀愁も感じさせる風景が浮かぶ。
そんな詩人の感傷など一切なかったかのように、空の青も海の青も真っ赤に染めてやろう!とばかりに米国から深紅(まっか)な”あいつ”がやって来た!
「シン・ゴジラ」に対するアサイラムからの返答がこちら!
……ではなく、「やりたい邦題」の便乗作品である。
いったい頭の中がどうなってたら、こんな変態サメ映画を思いつくのだろう……。
サメ=フリー素材
核・放射能汚染、公害、車社会に真珠ブーム……etc、と我々日本人が、様々な事を「怪獣」に託したように、一部のアメリカ人は「サメ」に様々な事柄を託したのだ。
正直、サメとゾンビとエイリアンとナチスは、ポリティカルコネクトとは一切無縁のフリー素材と化している気がしないでもない。
定期的に、サメ映画とゾンビ映画が製作されるのは、行き過ぎたポリティカルコネクトに疲れた一部のアメリカ人の悲痛な心の叫びなのかもしれない。
さて、大ヒットを記録した『シン・ゴジラ』に対するアメリカ(アサイラム)の返答がこの作品『シン・ジョーズ』だ!……と言いたいところだが、残念ながらは配給会社の便乗「やりたい邦題」の一つです。
”シン”は”Sin(罪)”ということらしいが、強引にもほどがある。
配給会社のコピーライターは、こんなことに英語の授業が役に立つとは、思いもしなかったに違いない。
監督は、あの『新・アリゲーター』『ゴースト・シャーク』のグリフ・ファースト。
マーク・アトキンス、アンソニー・C・フェランテと並び、サメの生態が誤解されるどころじゃない映画を作り続けてる監督の一人。
「出オチ映画三人衆」と一部の界隈では言われている。
「核実験の影響で全身を真っ赤に灼熱したサメが暴れまわる」、そんな出オチ上等な内容で、いつもの様に90分引っ張る。スゲー!
本作では、この”真っ赤に燃えるサメ”に加えて「SNS」「若者のネット文化」を茶化した内容となっている……どっかで観た様な内容だな…。
上記の内容に加え、舞台がビーチなため、水着のお姉さんと、下品かつナンセンスなギャグにも期待できる。
本作では、マセガキが発端のお色気シーンがあるが、うん、…やっぱりどこかで見た様な内容だな。
ロケーションが『ゴースト・シャーク』と一緒なんじゃないか?という疑問が浮かぶが、検証するすべがないので、そちらは誰か他の有志に任せたい。
さてさて、本作の内容は、
「平和なビーチに現れた(全身に放射能火炎をまとった)サメが人々を恐怖のどん底に陥れる。(放射能をまとった)サメが出現するも観光客が減る事をおそれた有力者は知らんぷりをする。(真っ赤に発熱した)サメを退治する為に、町の勇敢な人々(海洋生物学者、落ちこぼれのライフセーバー、ジャーナリスト気取りのユーチューバー、盗撮の常習犯)が立ち上がる」
といった()の中を考えねば、あの名作『ジョーズ』とまったく同じプロットなのが分かるだろう。
…いや、まぁ()の中が問題(アホ)なんですがね。
この放射能火炎をまとったサメ、”アトミック・シャーク”がとんでもない。
放射能サメが誕生する理由が、旧・ソ連の核実験が原因だとかなんかで登場するのだが、まったくバカバカしく感じる。
(まぁ、この「取って付けた」ような原因がたまらないのだが…)
しかしだ、そうなってくると「アメリカの核実験の影響で恐竜の生き残りが怪獣化する」という、我らが「ゴジラ」の設定も、冷静に考えるとかなり無理があると言えよう。
まぁ、そんな考えも、映画開始早々の真っ赤なヒレが海を割って泳いでいくシーンで、綺麗に吹っ飛ぶ。
このシュールな光景に色々とどうでもよくなる
海水から出ると自信の熱でメルトダウンを起こす設定。
「そんな状態で生きていけるのか?」
「人を喰ってる場合じゃない」
そんなツッコミは、赤く光る高熱で焼き尽くされる。
全身を真っ赤には灼熱させ、海水を蒸発させながら泳ぐ様は、まさに”モンスター”「サメの中のサメ」と呼びたくなる。
この”アトミック・シャーク”と人間の攻防が描かれるわけだが、あんまり真面目に撮るつもりがないのか、真剣にふざけているのかは知らないが、ナンセンスなギャグをふんだんに織り交ぜた、ゆる~い映画になっているのは、いつものグリフ・ファースト節。
よって、あんまり真剣に観る必要はなく、お菓子片手にテレビの前で寝っ転がって適当に観るには申し分ない作品だ。
……まぁ、どっちかと言えば本作を真剣かつ真面目に観れるのなら、それはある種の才能だと思う。
カメラ・音楽・演出・CGなど
本作は(B級映画にしては)予算があったのか、ロケーション、カメラに関しては恵まれている。
金がかかりそうな、でっかい機材がいるようなアングルで撮ってあるシーンが多々ある。
しかし、その予算を怪物に回す気はさっぱりないらしく、CGはいつもの適当なヤツ。
無駄に赤いホオジロザメが、陸上でジタバタもがいているのを観ると、
「あ、僕は今B級サメ映画を観ているんだな」という安心感はある。
音楽は、意外と良かった。
サメが迫ってくる緊張感、いよいよクライマックス!といった感じの音楽がシーンに応じて流れる。
その辺は、B級映画だとは思えないクオリティだ。
……80年代、90年代のエンタメ大作でかかっていたようなスコアなのを除けば、凄くいい。
オチはやっぱり爆破オチ。
「サメは爆発物である」のは、もはや疑いようのない事実だが、本作では水から上がったせいでメルトダウンを引き起こし、勝手に自爆する。
なんだかんだ言って、ゴジラは毎回メルトダウンを免れるが、日本の歴史を鑑みれば、たしかに映画とはいえ爆発させるわけにはいかない。
その辺は、文化の違いというよりは、歴史上背負っているものの違いだろう。
………そんな風に感慨にふけっていたが、よくよく考えたらこの映画、中盤、魚を食べた人間までメルトダウンで爆発させてやがった……。
さすがに「ねーよ!」とテレビの前で叫んじゃったよ。
そのシーンで、ただ魚を食べているだけのシーンなのに不気味さが半端ない。本当に気味悪く、不安になる。
そのシーンだけ、B級映画の監督とは思えない力量を発揮していた。
……その他は全体的に色々ぶん投げていたような気がすry……。
総評・感想まとめ
総評:♡♡♡♡♡♡ 6/10
●全体的にコメディタッチのふざけた作品。
●またもや「変態サメ映画」に傑作(?)が誕生した。
●基本的には『ジョーズ』のプロットを踏襲している。
●音楽はいい。
●SNS、若者のネット依存、芸能人の食レポなどを痛烈に批判した問題作でもある。
●キャラクター………〇、キャラは立っている。何故か爆発する人間もいる。
●ストーリー…………〇、基本的には『ジョーズ』と同じプロット。あってないようなもんだが、テンポは良く、シンプルでわかりやすいストーリー。ややコメディタッチ。化学的に正しい設定かどうかはとりあえず置いておこう。
●編集…………………✖、相変わらず場面転換は下手くそだ。
●カメラ………………〇、グリフ・ファースト監督作品にしては予算がもらえたのか、金がかかりそうな大げさな構図で撮っている箇所がチラホラ。露骨に遊んでいるシーン多数。
●怪物…………………〇、出オチ上等!なモンスター。放射能や炎の強さは場面によって異なるガバガバ設定。赤いサメ。ビックリするくらい赤いサメ。
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