本日紹介する映画は「ブルー・マインド」です。
キャッチコピーは「少女は変態する」……「少女」と「変態」が並んでいるが、あ、そこダッシュで寄ってこない!!
安心してください、芸術性が高く難解な作品の配給に定評のあるKLOCX WOLX(クロックワークス)作品です。あ、そこダッシュで逃げない(笑)
目次
作品情報・キャスト・スタッフ
「ブルーマインド」
・製作年:2017年
・製作国:スイス・上映時間:101分
・原題:「BLUE MY MIND」
・監督:リサ・ブリュールマン ・脚本:リサ・ブリュールマン
・出演:ルナ・ヴェドラー/ゾーイ・パステル・ホルトアイゼン/レグラ・クラウヴィラ―/ゲオルグ・シャーレック……etc.
予告編
「ブルーマインド」:あらすじ
両親の仕事の関係で新しい街へと引っ越してきた15歳の少女・ミア。親の都合に振り回されることへの苛立ちと、大人の女性へと変わっていく自分自身への言いようのない不安の中、ミアはクラスでも目立つ存在のジアンナたちと仲良くなる。アルコール、 万引き、男の子たち、ミアは憂鬱な気持ちを振り払うように、仲間たちと悪い遊びに手を染めていく。そんな中、彼女は決定的な体の変化を感じ始める。しかし、それは明らかに「成長」と言うにはあまりに不気味で、不自然なものだった。果たしてミア の身に一体何が起こっているのか?彼女を待ち受ける過酷な運命とは?
~作品資料より抜粋~
●解説
「変身系ホラー」みたいな予告編だが、配給は”真面目な映画”に定評のある、KLOCX WOLX(クロックワークス)です。当然かな~り真面目と言いますか、監督のアート性を前面に押し出した作品です。
ちなみに、本国のスイスでは「スイス映画賞で7部門ノミネート、作品賞・主演女優賞・脚本賞の主要3部門を受賞」しているそうだ。
個人的な感想なんだが、クロックワークスって予告編作るの下手な気がする。
いや、こういった「流行りの映画ではない」作品を上手く興味を惹けるようにするのは、物凄く難しいのだろう。既存のジャンルや流行の作品を彷彿させるような紹介、本作品だと「変身系のホラー」「じわじわ系のサイコホラー」みたいな予告編を作る。
↓↓
結果「なんだか騙された気分」になる事が多いような……。
えぇ、まぁ、芸術性の高い難解な映画は、普段「サメ映画」ばっかり観ている管理人には、脳の処理が追いついてこないだけかもしれませんが(笑)
感想/ネタバレ有
一応最初に断っておきますが、「変身系ホラー」ではないよ。
音楽と映像が綺麗な、監督のアート性が前面に出ている作品だと思う。
「少女は変態する」
本作は、思春期の少女の変化を幻想的な美しいヴィジュアルで描いた作品である。
「少女」から「大人の女性」に変わっていく様を、「人魚姫」のメタファーを通して描き出している。
その様が、キャッチコピーで使われているように「少女は変態する」なんだが、本作を「変身系ホラー」だと思ってみると痛い目に遭う。
……うん、真面目なアート性の高い作品を引っ張ってくることに定評のあるクロックワークスが、配給している時点で、そういった「変身系ホラー」ではないという事をなんとなく察するべきだよね。
基本的にドラマ作品なんだが、今までの自分とは全く違うものに変化していく、主人公ミアの恐怖をじわじわと描いている。思春期の体が変わっていく不安を「人魚姫」をモチーフに描いた作品だ。綺麗な映像と相まってまさに現代の「寓話」である。
ミア役の俳優の演技も相まって、じわじわ系のサイコホラーぽい作品と言えないこともないが、基本的にお悩み系青春ドラマである。
ある日、自分の体に周りの人間とは明らかに違う変化が起こる。当然不安になるミアだったが、家族を含めて周りの大人は真剣に取り合わない。
そんなミアは、クラスの“いけてるグループ”=“不良グループ”に接近していき、徐々にグループに染まっていく。
万引き、タバコ、酒、そしてSEX……不特定多数との肉体関係、怪しいお薬と、堕落街道驀進中。
その過程で、当初はミアを「都合のいいパシリ」ぐらいにしか思っていなかった、リーダー格の少女ジアンナとの友情を深めていく。しかし、ミアの変化は少しづつだが確実に進んでいき……というのが、本作の概要だ。
こういった思春期特有の「自分の体はみんなと違うのではないか?、醜く、劣っているのではないか」なんて、不安は覚えがないだろうか。
また、「本当は親と血がつながっていない」なんて妙な空想にふける=「今までのアイデンティティの崩壊と再構成」それにまつわる疎外感。そういった悩みがあったのをボンヤリと覚えている。
「くっ!!おれの右手の封印が……」
というのは、別の症状です。
儚くとも美しい青春時代の思い出に浸りたい人はどうぞ。
水槽の中で僕ら息をしている。
本作でまず目につくのがカメラワーク。登場人物たちをカメラに正面におさめ、観客の視点を固定する。だいたいの映画において、この「カメラの真ん中に人がくるようにする」というのが行われているのだが、本作はちょっとそれが度を過ぎている。
あらゆるシーンで常に、同じ構図で画が撮られており、それが四角い水槽を眺めているような印象を与える。画面の登場人物は、さしずめ「観賞魚」といったところか。
本作では、実際に画面に何度も「水槽」が出てくる。水槽の中で優雅に泳ぐ観賞魚を、主人公のミアが、いきなり掴んで食べ始めるシーンがある。
そのシーンは「少女がなにか他の者に変化していく」のを、ビジュアル的に分かりやすく表現しているシーンであり、自分の中に、抑えきれない衝動が渦巻いていることの決定的な証である。
そういった「変化の始まり」であると同時に、「水槽」の中の「観賞魚」を登場人物たちの姿を重ねて描いている。狭い水槽の中に押し込められ、さらにはある日突然、「大きなもの」に喰われる、理不尽な運命。
その「大きなもの」というのは、「運命」だとか「世の中」といったおよそ人智を超えたどうしようものないものだったり、ミアが受けた「苦しんでいる他人に対して無関心な態度」そのものだったりする。
そいてそういった「大きなもの」を構成する一要素としての「小さい自分=観賞魚」なのが、本作のテーマの一つなんじゃないだろうか?
そうなると、ミアに対して無関心な大人も、ミアを欲望の捌け口としてしか見てない野郎共も、友情を結ぶジアンナも、等しく「水槽の中の観賞魚」であって、「大きなもの」に理不尽に喰われるだけの存在という見方もできるかもしれない。
登場するキャラクター全員を、四角いフレームの中に収めて撮っているのだが、そこから自由になってる存在が一つだけあった。
猫である。
こいつだけは映った当初から画面の右隅にいる。さらにミアを映す→もう一度猫を映す、左隅に移動と、本作で唯一「四角いフレームの真ん中」の呪いから解放されている。
「水槽の外」=「自由気まま」
「猫は自由」という監督の個人的な意見かもしれないが、物語に登場する猫というのは、往々にして女性のメタファーである。また、猫は魚を食べる。そういったことから考えると、この猫は「今までのミア」「思春期に入る前の、自分を意識する前の自分」といったところだろうか。
画面に一回映っただけで、その後、登場しないのもそういった理由か?
なんにしろ、カメラを固定して「水槽の中」を意識した画面作りをしていたと思う。
あの思春期特有の「自分はどこへも行けない気がする」、なんて閉塞感はなんだったんだろうなー、なんて事を観ながら考えてしまった。
少女は海へ
綺麗な作品だと思うが、個人的にはあんまり入っていけなかった。
映像の撮り方が、少しばかり「まじめ過ぎる」と感じてしまい、その辺がダメだったかな?
それと、本作品はあんまり緩急のある構成になっていないのと、カメラワークがずっと一緒なので、どうして飽きてしまった。
カメラワークに関しては、上述したように「水槽の中」をイメージさせるためにやっている。つまり作品の根幹をなす要素だから、そこを批判するのは間違いなんだろう。そこはわかっているのだが、やっぱりもう少し変化が欲しかったかな~。
あと「日常パート」が長いのも、そういった「水槽の中」=「基本的に変化がない」を表現しているだと思う。
こういった息苦しい世界を「水の中」「水槽の中」に例えている。
本作のラストで主人公のミアは、人魚のように変化して海に帰っていくのだが、これも息苦しい「水の中」を「人魚のようになる」=「他の人よりは自由に泳いで行ける」という解釈なのだろうか?
最後まで、四角いフレームのような撮り方だったから、広い海も結局は、「狭い水槽の中」に過ぎないのかもしれない。そんな風に感じてちょっと憂鬱になった。
以上のような理由で、話が陰鬱な感じがして、入っていけなかった。
そういった真面目な理由とは別に、この作品、管理人は友人と一緒に鑑賞していたんだが、友人が※「ラストはサザエさんオチなんじゃない?」と、ある意味オチを当ててしまったせいもある。あまつさえ、彼はサザエさんのテーマを口ずさむ……おいっ!シリアスな作品が台無しだろ!
と、友人に文句を言いながらも、管理人の頭の中には、ジュディ・オングの「魅せられて」のサビが流れていたのは内緒だ。
( ゚Д゚)<wind is blowing flom Aegaen 女は海~
※「サザエさんの最終回」にまつわる都市伝説の一つ。曰く「商店街の福引で当てた海外旅行の帰りに、飛行機が海に墜落し、磯野一家はそれぞれ名前が表す魚介類になって海に帰っていった」というもの。………うん?、フネ…?
映像が綺麗なアート系な本作。気になった人はどうぞ!
総評・感想まとめ
総評:☆☆☆☆☆☆ 6/10
●【よかったところ】
・映像が綺麗。
・音楽の使い方がいい。
●【悪かったところ】
・胸糞悪い登場人物が多い。
・画面の構成がいつも同じなので変化がないように感じる、飽きてしまう。
●雑多な感想
・基本的にクズ野郎しか出てこない。 ・そもそも荒れた家庭しか出てこない。
・猫は自由である。
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