「バーニング・ブライト」感想&紹介 ~ジョニーと虎と家族たち~

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哺乳類、獣系、獣人など。

今回紹介する作品は「バーニング・ブライト」です。

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作品情報・スタッフ・キャスト

「バーニング・ブライト」
製作年:2010年  
製作国:アメリカ  
上映時間:85分 
原題:「BURNING BRIGHT」

監督:カルロス・ブルック
製作総指揮:ウェイン・モリス  ・脚本:クリスティーン・コイル・ジョンソン/ジェリー・プレンディビル・ルー  ・撮影:マイケル・マクドノー  ・音楽:ザック・ライアン

出演:ブリアナ・エヴィガン/チャーリー・ターハン/メアリー・レイチェル・ダドリー/トム・ノウィッキ/ミート・ローフ/ギャレッド・ディラハント……etc.

予告編

映画『バーニング・ブライト』予告編

「バーニング・ブライト」:あらすじ

ケリーは、母を亡くしてからずっとひとりで自閉症の弟トムの面倒を見ながら暮らしてきた。
大学進学が決まり、トムを施設に預けることにしたケリーだったが、母が銀行に残していた預金は、一儲けを企む義父のジョニーがすべて使い込んでいた。
その金で手に入れたのは、1頭のシベリアンタイガー。だが、ジョニーはトラの入った檻を家の中に放置したまま外出してしまう。
その夜、ケリーが目を覚ますと、目の前に飢えた獰猛なトラが・・・!
超大型ハリケーン襲来のため、外側から完全に窓や扉を塞がれ、密室と化した家の中で、ケリーと弟は果たして生き残ることができるのか! ?

~Amazon作品紹介より抜粋~

内容的には「密封された家に凶暴なトラが放たれ、姉弟が逃げ惑う」という、いたってシンプルなプロットである。いわゆる「ソリッド・シュチュエーションスリラー」である。

ソリッド・シュチュエーションスリラー、モンパニ映画としては、まぁ、とりたて言うべきところがない映画です。

ただし、管理人は非常に面白く観た

その理由を↓に書いていきます。

「バーニング・ブライト」:感想/ネタバレ有

製作・配給は”ライオンズゲート”(&MIDSHIP)です。トラだけど”ライオンズゲート”作品です。

いや、関係ないって分かってても、とりあえず言いたいじゃん。(おっさん臭)

内容は「タイフーンが接近している中、田舎の一軒家にトラと一緒に閉じ込められた若い女性が、自閉症の弟を守りながら、密室と化した家の中を逃げ惑う」といったもの。なんだか設定に無理がありそうだが、映画を観た感じだと、舞台は綺麗に整えられる。

ジャンルとしては「ソリッド・シュチュエーション・スリラー」に分類されそうな映画。

正直な感想として、「モンパニ」や「ソリッド・シュチュエーション・スリラー」としてはイマイチな作品だ。何度も言っているが、哺乳類系はどうしても「可愛い」とか「美しい」と思ってしまう。低予算の安っぽいCGや、着ぐるみでは、マヌケさが目立つし、かと言って本物を使うとなると、「動物に演技しろと言う方が無理」ってやつで、扉をひっかいているシーンなんて、じゃれている様にしか見えない。

もう、観ていてホンワカ
(*’ω’*)←こんな顔である。

本気で怖がる人は、多分動物がダメな人ぐらいだと思う

しまいには、「なんでこんな動物が可愛そうな映画を撮ったんだ」という、動物愛護団体的な意見まで飛び出す始末だ。

本作品も、御多分に漏れず、トラが「可愛い」ので、そんなに怖くない
やっぱり綺麗な動物なんで、観ていてホンワカである。(*’ω’*)

フェミニズム映画としての「トラ映画」

上述したような理由で、「モンパニ」及び「ソリッド・シュチュエーション・スリラー」として観るとさっぱりな映画だ。
製作・配給が、ホラー映画大好きっ子のライオンズゲートで、B級映画の発掘請負人MIDSHIP(ミッドシップ)なんてのも一役買っている。

ライオンズゲートでMIDSHIPですよ!、奥さん!

ただし、本作は、MIDSHIP系の低予算B級作品にしては、妙に丁寧に作られている。低予算のB級ホラー作品として扱うには、まとも過ぎるのだ。

そこで、管理人は、本作はいわゆる「フェミニズム映画」であるという意見をあげたい。

本作は「理不尽な理由によって、家庭に縛られた女性が、自らの意思をもって外に出ていく」までの顛末を描いた作品だと思う。

ヒロインは才能と強い意思を併せ持つ若い女性だが、
① 自閉症の弟がいる。(弟の事は大切に思っているが、まだ関係が築けていない)
② 継父が、勝手に母の遺産であり、弟を施設に預けるためのお金を使い込む。
そういった理由から、大学を休んで、お金の事で継父に文句を言いに実家に帰ってくる。

運が悪い事に、③大きなタイフーン“※アンドリュー”が接近していた。(※男性名
→そのため、窓やドアは外から板で打ち付けられていた。ヒロイン、外に出れない

さらに、事故故意か分からないが、継父が「個人動物園を経営するため」に買った④シベリタイガーの雄と一緒に閉じ込められてしまう。

(トラがであることは、劇中、彼が”he”で表されることから分かる)

① ②③④と、見事に男性(および男性として扱われる)のせい「女性が家に縛られて酷い目にあう」事態になる。(ついでに、電話越しに、ヒロインに厳しい意見を言う担当教授は男

じゃあ、この作品が「男性は悪、女性は正義」「女性は家庭を捨てて、自己実現すべき」といった安易なメッセージかと言えばそうではなく、劇中
⑤母親は死んでいて助けてくれない
弟を預ける先の院長(女性)には、お金を理由に拒絶される。
の様に、ヒロインと同じ女性は、ヒロインを助けてくれない。

ついでに、①ヒロインは弟の事は嫌いじゃない。なかなか複雑に入り組んでいる

さらに、終盤にヒロインは一人で外に脱出するが、自閉症の弟を助けに家に戻り、トラと対決する、展開が待っている。
この時の、「自閉症の弟」=「赤ちゃん」=「家庭」のメタファーとして機能しているんじゃないだろうか?

(家事が全くできない・協力的ではない男性を“大きな赤ちゃん”と揶揄するようだ。耳が痛い……)

また、この脱出の時に、狭い窓?換気口から脱出するんだが、映画においてこういった「狭い穴・暗い穴」は子宮口をあらわす

要は「生まれ変わる」みたいな意。
      ↓
「生まれ変わったヒロインが、虎と対決する」展開になっていくのだが、ここに来て、酒場で「もう一杯と」やっていた継父が銃を手に登場

銃=男性の象徴ヒロインに向けるが、まぁなんだかんだあって、継父、虎に喰われる

ここで、ヒロインが虎を殺すところまでいっていたら、「フェミニズム映画」として、スゲー分かりやすい作品だったと思うのだが、虎はスルーされる

ラストシーンで、前半で、触れられるのを嫌がって暴れていた弟と、手を繋いでいるシーンが印象的だった。
ちなみに、劇中で「ヒロインが弟を殺す夢」を見るシーンがある。フロイト・ユング的解釈によると、「夢の中で誰かを殺すのは、その殺した相手との関係が新しいものになる事の暗示」だったりする。

それが、最後のシーンに繋がっているんじゃないかと思う。

「ヒロインの自己実現を邪魔する男は消え、家庭も円満」みたいな終わり方になる。めでたしめでたし。

このように「フェミニズム映画」として観れば、「ヒロインが、①タイフーン(♂)の日に、②継父(♂)の企みによって、③シベリアタイガー(♂)と一緒に家に閉じ込められ、④自閉症の弟(♂)と一緒に逃げ惑う」、なんて有り得ない設定も納得できるんじゃないかな

 

文学的な「父親殺し」の物語。

↑上に書いたような理由で、管理人は、この作品は「フェミニズム映画」の一種なんじゃないかと、思いながら観ていた。

ただし、ヒロインが「虎」を殺してないのが、この論としての骨組みを弱くしている気がする
70年代じゃあるまいし、「フェミニズム」も複雑になっているだけかもしれない。

なによりも、ヒロインの格好が始終セクシー過ぎるんだよね。タンクトップにショートパンツで、クライマックスは雨に濡れて透けてる。(これが一番の理由

と、いう訳でもう一つは、単純に「虎」というのは、ヒロインのボーイフレンドのメタファーなんじゃないかという意見。この恋人が「ヒロインのためならなんでもやる」みたいな凶暴な男=野獣=人喰い虎のような男

中島敦「山月記」や、フランツ・カフカ「変身」のように、「動物は、”人のなんらかの側面”のたとえ話だよ」、みたいな論

劇中、継父が、ヒロインに多額の保険を掛けて殺害を企んでいたが、実はヒロイン、そういった事にとっくに気づいていたんじゃないだろうか?

お金の使い込みの事もあり、「この親父ヤルしかねぇーな!となったんじゃないだろうか?

それで、タイフーンのどさくさに紛れて、恋人と共謀しヤッてしまったんじゃないだろうか。

この映画、ヒロインがやたらと見つめ合っているシーンが多い

映画において「見つめ合う」=「SEXの暗喩」だったりする。

つまりは、「タイフーンの日、夜通し恋人とSEXに明け暮れたヒロインが、朝になって継父を恋人と共謀して殺した」という意味なんじゃないだろうか?

「虎がどうのこうの」というのは、ヒロインの心象風景みたいなアレなんじゃないかと。

テーマとしては、どちらかと言えな文学向きで、映像化してしまうとチープになるやつなんじゃないかと。

色々と書いてみたけど、この作品、ここまで真剣に考える映画じゃないですよね

(ライオンズゲートでMIDSHIPですよ!、奥さん!)

ここまで深読みして観るような映画じゃないかもしれませんが、撮影の基本的な事はしっかりしているし、演技もいいので、虎好きな人、モンパニ大好きな人は観て欲しい

 

結局、いつもの層アピールして終わり

総評・感想まとめ

総評:♡♡♡♡♡♡ 6/10
キャラクター………◎
・少ない登場人物たちだが、その分、深く掘り下げている。
・演技は上手い。

ストーリー………〇
・話の構成自体はいたってシンプル。
・ありえない設定だが、流れはスムーズ。

カメラ・演出とう………○
・カメラワーク・演出とう、映画の基本的な事のレベルはしっかりしている。
・虎が襲ってくるシーンのカット割りは、しょうがない面もある。

怪物……○
・怪物は本物の虎を使用している。エンドクレジットによると、三頭参加している。
・↑野性的な美しさあふれる奴であんまり怖くない。カッコイイ・可愛いと思ってしまう始末。

 

その他・印象に残ったところ
・虎たちは、人に慣れているのだろう。目が優しい
・弟の行動が全く読めない点が面白い。
・継父が小者ゲス過ぎて、モンパニの悪役としては完璧に近い(笑)

 

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