今回紹介する作品は「リターン・オブ・ジーパーズ・クリーパーズ JEEPERS CREEPERS 3」です。
やたらと長い邦題だが、実質「ジーパーズ・クリーパーズ3」だ。監督はシリーズ1作目2作目と同じく、ヴィクター・サルバが務める。
シリーズ三作目の本作では、監督が大暴投。
一作目、二作目で製作総指揮を務めたフランシス・F・コッポラは一応関わっているようだが、監督の手綱を握るのを失敗した感じが凄い。
目次
作品情報・キャスト・スタッフ
「リターン・オブ・ジーパーズ・クリーパーズ」
・製作年:2017年
・製作国:アメリカ
・上映時間:100分
・原題:「JEEPERS CREEPERS 3」
・監督:ヴィクター・サルバ
・出演:スタン・ショウ/ガブリエル・ホウ/ブランドン・スミス/ジーナ・フィリップス
※シリーズ一作目にも出演したジーナ・フィリップスも登場するが、出番自体はやっつけ(笑)
予告編
『リターン・オブ・ジパーズ・クリーパーズ』:あらすじ
「23年間に一度23日の間そいつは、”喰う”。
とある田舎町でトラックから大量の人骨が発見された。23年ぶりに戻ってきた”クリーパーズ”を殺すために、完全武装の特殊部隊が追跡する。
一方その頃、女子高生のアディーは、義理の父との関係が上手くいかずに、祖母と一緒に生活していた。祖母のゲイリンは、過去に息子を”クリーパーズ”に殺された過去を持つ。ある日、死んだ息子が”奴が戻ってくる”と夢の中で警告にあらわれて……」
シリーズ一作目の警察署から、話はスタートする。保安官役を務める人も、一作目(2001年)から続投している。正直かなり昔の作品なんで、あんまり覚えていない(笑)
ちなみに、本作のレンタル・DVD発売に合わせてAmazonプライムでは、一作目を無料で配信中。
感想/ネタバレ有
時系列は1作目の後。
「1」→「3」→「2」の時間軸で語られる。
「4」を作る気満々だが、ここまで好き勝手作ってしまうと、続編は怪しいんじゃないかな?
個人的には是非とも「4」を作って、シリーズを完結して欲しい。
今度は赤シャツだ!
本作品の構成は「2」と同じで、「クリーパーズを追う側」と、「クリーパーズに追われる側」の両方の視点から描いている。ただし、「追う側」が序盤と終盤に挟まっており、構成としてはシンプルだった「2」とは違い、本作では「追う側」と「追われる側」がしょっちゅう入れ替わるため、話がややこしい。
正直、かなりブツ切りでとっ散らかっている様に感じてしまう。やや、マイナスポイントだと思う。
また、映像がかなり間延びしたものが多く、テンポが悪いのも大きなマイナスポイントだ。
また「1」「2」と比べてホラー要素も少ない、または雑に扱っていたのはショックだった。
一作目の時点でクラシックスタイルのホラーとしては、ほぼしんがりを務めたような作品だったが、本作では基本的にクラシックスタイルを踏襲しながらも、時代の流れか所々に、変なアートっぽい映像を挟む。
また、CGが使われているのだが、CGの出来うんぬんよりも、総じて演出が雑である。明るいシーンが多く、現実感があるせいで、却って噓っぽい。
時系列的に「1」と「2」の間だが、今回はなぜか赤シャツに着替えている。そのあたりを副音声のオーディオコメンタリーで突っ込まれており、大爆笑必須。
あ、本作をDVDでレンタルしてきた方は、忘れずに副音声のお笑いコンビ・「バタリアンズ」のオーディオコメンタリーも視聴して欲しい。本作の評価が上がるだけではなく、「1」「2」も別の視点で鑑賞できます。
ええ、監督の趣味が分かった上で鑑賞し直すと、ギャグに見えなくもないですがね。
「1」「2」はちゃんと、フランシス・F・コッポラが、手綱を握っていたのだという事がわかる。
今作では、ヴィクター・サルバにやりたい放題やらせた結果、とんでもない趣味作品ができあがったもんだなぁ……。
中年オヤジをねっとりと撮影。
まず最初に、管理人に特定の性的趣向の方・趣味をこき下ろすつもりはない事を明示しておく。
僕がこの作品を観て思わず笑ってしまったのは、監督が視聴者置いてけ堀で、自分の趣味に全力だったからだ。
この「ほんの一部を除いて誰もついてこれない趣味の話」を全力でやってる作品は笑うしかない。
なんとなく「デスカッパ」を思い出す。
副音声のオーディオコメンタリーによると、監督がゲイ。ついでに男を襲って刑務所に収監されていたらしい。「ワンパンマン」のぷりぷりプリズナーみたいだな…。
まぁ、「1」の冒頭で主人公に「ゲイ・フィーバー」「ゲイ・フォーエバー」と言わせている時点で、隠す気は毛頭なかったのだろう。
「1」の時点で「主人公の男の子(ジャスティン・ロング)に立ちションベンさせる」「怪人が男の子(ジャスティン・ロング)の臭いを執拗に嗅ぐ」「モブキャラに無駄にイケメンを多用して、バストアップ・フェイスアップでじっとりと撮る」という作風だったわけだ。
(ちなみに、女性キャラクターの惨殺シーンはほとんど映っていない)
ただし、フランシス・F・コッポラがちゃんとコントロールしていたため、映画として面白い、なによりもクラシックスタイルのホラーとしてよく出来ていたのだと思う。
上にあげたような、監督の趣味丸出しな映像も、ちゃんと「ホラー映画」の一場面として機能していた。
その結果、「ジパーズ・クリーパーズ・1」、「ヒューマン・キャッチャー」は傑作ホラーとなったのだが、本作「3」では、監督が撮りたいシーンを好きなだけ撮った結果、妙に間延びしたシーンが多くなってしまい、テンポが悪い。
とにかく気づくと、「優しい目をしたおっさんが、訳知り顔で見つめ合っているシーン」ばっかり見せられる。監督の好きなタイプなんだろうけど、こっちはホラー映画を期待して観ているから、正直狸に化かされた気分だ。
さらに、場面の切り替わりが多く、緊張感が続かない。ホラー映画としては駄作だと思う。
ヒロインの女の子は、ちゃんと正統派の美人を使っているのに、画面からほぼ消えるからね。20分以上おっさんしか出てこないという、謎采配。若いねーちゃんばっかり殺される、オードソックスなホラー映画とは真逆の構成。
監督が、主演のおっさん俳優二人をねっとりと撮影したかったのは、画面か伝わってくる。それは別にいいんだけど、今回は誰も手綱を握ってないから、間延びしちゃってホラー映画の体裁を失っているのが残念。ホラー演出がほぼ壊滅している。
編集とテンポって大事なんだなと思った。
いや、オーディオコメンタリーを観た後、もう一回つっこみながら観るのは楽しかったけど、僕が期待していたのは、クラシックスタイルホラーのしんがり、最後のあだ花としての「ジーパーズ・クリーパーズ」なんだよね。中途半端なアート作品じゃないんだよ。
ついでに、話が、ほとんど進まないのも残念。
続編の「4」を作る気満々だけど、ここまでやりたい放題やると、次が出るか心配になってくるw
好きなシリーズなんで、何とかして完結させて欲しい。
総評・感想まとめ
総評:♡♡♡♡ 4/10
●キャラクター………〇
・キャラクターは濃い、ただし、丁寧に撮るのはオジ様限定である。
・ヒロインは正統派の美人なのに、かなり適当な扱いで笑える。
●ストーリー………△
・まとまりが悪い。
・期待していたほど話が進まない。
●カメラ・演出とう………〇
・今では珍しい、クラシックスタイルのホラーの撮影方法をやっていて好感が持てる。
・監督の趣味が全面的に出過ぎである。もう少しバランスというものを考えて欲しかった。
●怪物……〇
・相変わらず正体不明。一応、正体にせまるシーンもあるが、その伏線は「4」まで待たないといけない。
・本作では車が大活躍。オーディオコメンタリーで「監督の同一化の対象が”クリーパーズ”から、自動車に映ったんじゃないか」と言われていたのには笑った。
・なぜか赤シャツである。お洒落さんである。
●雑多な感想
・監督が撮りたいように撮った作品。
・全体的にテンポが悪い。
・映画自体はしょうもない出来だが、副音声のお笑いコンビ・「バタリアンズ」によるオーディオコメンタリーは面白い。これを聞いてからシリーズを観なおすと、全く別の作品に感じる。
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