今回紹介する作品は「ラスト・ドア」です。
イタリア製のゾンビ映画です。キャッチコピーは「開けられたら、最後。」です。
いわゆる「アート性の高いホラー映画」ってやつです。
作品情報・スタッフ・キャスト
「ラスト・ドア」
・製作年:2018年
・製作国:イタリア
・上映時間:90分
・原題:「GO HOME- A CASA LORO」
・監督:ルナ・グアラーノ
・出演:アントニオ・バンノ/シディ・ディオップ/アワ・コウンドウル/パピ・モマル/シーク・ドーダ……etc.
予告編
↑煽り文句の「渾身の痛快風刺ゾンビ映画」から分かるように、ゾンビ映画・ホラー映画よりも、社会風刺に力を入れている作品です。
「ラスト・ドア」:あらすじ
移民反対の抗議集会が活発化するローマ。イタリア人の若者エンリコもまた、不法入国者を人間以下に見る差別主義者だった。しかし、突如発生した暴動で街が混乱に陥る中、一度は死んだ者たちが次々とゾンビ化していく異様な光景を目の当たりにしたエンリコは、助けを求めて移民が住む収容所の閉ざされた扉を叩き続けた。襲い掛かるゾンビの群れから間一髪のところを救い出されたエンリコは、残り少ない食料を分け与え寝る場を提供してくれる移民たちの優しさに触れ、差別の意識が薄れていくのを感じていた。そんな矢先、遂にゾンビが屋内に侵入し最悪な事態に見舞われてしまう…。
~Amazon商品紹介より抜粋~
移民反対のデモに参加していた主人公が、突如として発生したゾンビパニックに巻き込まれる。逃げ込んだ建物は移民コミュニティのものだった。言葉も満足に通じないなか、助けてくれた移民と次第に心を通わせる主人公。
しかし、建物は包囲され、次第に追い詰められていく。
果たして生き残った人々の運命は……というのが本作品の概要だ。
「本当に怖いのは人間です」の”怖い人間ドラマ”に、現実のシリアスな問題を絡めた感じの作品です。
「ラスト・ドア」:感想/ネタバレ有
最近紹介した「Z BULL ゼット・ブル」とは違い、社会派のアート系のゾンビ映画です。
監督のルナ・グラ―ノは女の人らしいが、調べてもあまり情報が出てこない。
ゾンビ映画に限った話じゃないけど、ハリウッド以外はあんまり情報が出てこない。
「移民反対デモのに参加した主人公が、突如として発生したゾンビパンデミックスを、移民と一緒に生き延びる間に、両社に理解が生まれていくが…」、というあらすじを見て分かるように、怪物を通じて説教&問題提起をするタイプの映画です。
そうか……お前も、ゾンビになにか託しちゃったか……。
アート性の高いホラー作品。
◇社会派のゾンビ映画
ゾンビ映画にしては、なんだかテーマが重い真面目な作品。
恐らくここの映画のゾンビというのは、「差別意識」や「社会に生まれた言いようがない悪意」みたいなもののメタファーだと思う。
そういった「悪意」は、「あっち側」も「こっち側」も関係なしに広まって、世界に牙をむく恐ろしいもの、として描かれている。
疫病にも似たもので、誰もそれを止めることができない恐ろしいものである。
そんな中で生まれる理解と友情。しかし、それすらも大きな「悪意」が食いつぶしていくいく。
そんな感じの作品。
ゾンビ映画なんだが、映像が妙にお洒落と言いますか、綺麗です。
建物を照らす、オレンジ色のボンヤリとした光が、シックでいい感じだ。
所々で使われる歌もいい。iTunesにあったら欲しいくらいだ。
画面の構成や光の使い方がいい。
いい感じのアートなんだが、残念なのはこの作品がゾンビ映画なことぐらいだ(笑)
いや~ゾンビ映画を借りてくる層は、こういったアート作品は求めてないんじゃないかな?
◇ゾンビに詳しい兄貴。
登場人物の中に、やたらとゾンビに詳しいキャラクターがいる。
「テレビのゾンビドラマを全話観た」らしい。
(「ウォーキング・オブ・ザ・デッド」かな?」
ゾンビに詳しい兄貴である。
このキャラクターが「ゾンビ映画あるある」を連発する、「ゾンビ映画的正解を言う」視聴者のメタ的な、ある意味コメディリリーフである。
しかし、同時に「テレビやネットで事件が起こる度に、正論を言う人間」=「傍観者」=「テレビの前の視聴者」を表現しているのではないだろうか?
ゾンビに詳しい兄貴が、終盤その「正しさ故に罰を受ける」=「自らの言っていることが正しい故に、自らに起こる悲劇を回避できない」展開が待っている。
そうなると、「傍観者」である「テレビの前の視聴者」である僕らは、起こっている現実の事件に対して、どんな代償を支払う羽目になるか……、そんなメッセージを、送ってくる深いキャラクターである。
( ゚Д゚)<(そんなわけあるか!)
深いキャラクターかどうかはおいて、印象に残る兄貴だと思う。
◇主体性のない主人公。
主人公が、とにかく主体性のない、フワフワした若者として描かれている。
移民の反対デモに参加しても、デモより居合わせたお姉ちゃんを口説くのに熱心である。基本的に役に立たない、自らは何も行わない人間として描かれている。
ヒョロヒョロして軟弱で、特技もなく、外国語も話せない・周囲の移民とコミュニケーションが取れない、状況に流される。
そんな主人公が、助けてくれた移民と行動を共にするうちに、次第に心を通わせていく様が描かれる。
「どこにでもいる若者」ように描かれていくが、最後の最後で、非常に下種な行動をとる。
そういった行動の全てが「主体性なく流された結果」で、映画のラストになってしまうわけだ。
最近の「ヒャッハー!」なゾンビ映画と違い、重苦しく、説教臭い、しかし、映像自体はお洒落なゾンビ映画です。
アート系のホラー映画に抵抗ない人は、一度観て欲しい。
総評・感想まとめ
総評:♡♡♡♡♡♡ 6/10
●キャラクター………〇
・主人公がいい感じに下種。
・ゾンビに詳しい兄貴がよかった。
●ストーリー………△
・最近のゾンビ映画にしては、珍しく完全なバットエンド。
・出来ればもう少し動きが欲しかった。
●カメラ・演出とう………◎
・映像の色調・明暗が綺麗。
・使われている音楽もよかった。
●怪物……○
・ゾンビのクオリティ自体はまあまあの出来。ただし、メインではなく舞台装置扱い。
・数も多く、ノロノロ動く。「ゾンビはノロノロ派」大歓喜。
●その他・印象に残ったところ
・ハンマー使いの巨漢。
・サッカーのシーン。
・「ゾンビ映画あるある」
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