今回紹介する作品は「怪怪怪怪物!」です。
これほど当ブログにぴったりなタイトルも珍しい。
目次
作品情報・スタッフ・キャスト
「怪怪怪怪物!」
・製作年:2017年
・製作国:台湾
・上映時間:110分
・原題:「報告老師! 怪怪怪怪物!/MON MON MON MONSTERS」
・監督:ギデンズ・コー
・脚本:ギデンズ・コー
・出演:トン・ユイカイ/ケント・ツァイ/チェン・ペイチー/リュウ・イーアー/リン・ペイシン/タオ・ボーメン/ジェームズ・ライ/キャロリン・チェン……etc.
監督のギデンズ・コーの作品「あの頃、君をおいかけた」は日本でも評価が高くリメイク作品も作られたようです。本業は小説家らしい。
予告編
「怪怪怪怪物!」:あらすじ
いじめがはびこっている東実高校。いじめられっ子のリン・シューエイは、いじめっ子三人と独居老人宅での奉仕活動を命じられる。そこで、二匹の怪物を発見した彼らは、捕まえた小さいほうの怪物を自分たちのたまり場に連れて帰る。
独自の「調査」と「実験」を繰り返すが、やがて事態は、彼らの想像も出来ない方向に動いていく。
はたして、彼らの運命は?
そして「怪物」とはいったいなんなのか?
「怪怪怪怪物!」:感想/ネタバレ有
「”シッチェス映画祭”ファンタスティックセレクション2018」で公開された台湾製の「学園いじめモンスター・ホラー映画」ともいうべき作品です。
思っていたよりも、ずっと良かった。
個人的には、本年度に観た作品のベスト候補です。
いじめ・スクールカーストは、普遍的なテーマか?
冒頭から、主人公に対するイジメがこれでもかと描写される。
イジメの証拠、主人公に対する冤罪の証拠を掴むも、担任は相手にしない。あろうことか、いじめっ子と一緒に、独居老人の収容施設にボランティアに行く事を命じる。
そこで老人たちへの失礼極まりない様子が映されるんだが、そのシーンがコメディタッチで、妙にお洒落。本作は、ちょくちょくコメディや、よく分からないギャグが入る。俳優のコミックタッチな演技も相まって、残酷な嫌なシーンに風刺じみた側面を与えている。
きつく感じるか、マイルドになってよかったと感じるか、賛否両論ありそうです。
独居老人の一人が、大陸から金塊を持ち帰ったのではないかと考えた悪ガキ軍団は、深夜にこっそりと忍び込みます。金塊の目論見は外れ、引き返す途中で、人を喰っている化物発見する。
偶然捕らえた怪物の一匹を、秘密基地に持ち帰り、独自の「調査」と「実験」を繰り返す悪ガキたち。その「調査」と「実験」が、まんま拷問=イジメな訳なんですよ。
「イジメ」のターゲットが、自分から怪物に移り、ホッとしたような後ろ冷たいような気分になる主人公。いじめっ子グループのボスの彼女も加わり、怪物に対する「イジメ」はエスカレートしていく。
「自分はあいつらとは違う」と必死に言い聞かせる主人公だったが、怪物に対するイジメの中に快感を感じるようになる。主人公の中にも汚い部分があったわけです。
さらには、いじめっ子グループと秘密を共有するうちに、互いに友情めいたものが生まれてくる。それは、「ジャイアンからのび太に対する友情」よりも、もっと一方的なものだったかもしれないが、確かに「友情」だったわけです。
ついでに、ボスのバックボーン的なことも明かされて、単純な善悪では語れない様が描かれる。
そんな中、破滅のきっかけとなる事件が起こって……というのが、本作の流れである。
いじめっ子グループの演技の上手さもあって、本当にムカつく展開なんだが、一方で、主人公にもクソみたいな側面がある事を匂わせたり、いじめっ子にもそうなってしまうバックボーンがあったりと、なかなか複雑である。その辺のドラマが見どころがあってよかった。
ついでに、ボスの彼女の最期のシーンだけど、泣きわめいて命乞いするわけもなく、ああいった行動をとれるメンタリティーが怖い。なーんか、詳しく描かれてないだけで、あの女の子が一番歪んでいると思うな。
「イジメ」や「スクールカースト」が、全世界共通の普遍的な現象のなっているのは、非常に嫌だが、本作のテーマは非常に刺さるんだよね。
この映画観てると「ああ、こういう奴いたな」ってのが、そっこら中に映っていて辛いです。今思い返せば、あいつも自分も未熟な若者だったなぁ……と、思う事もあるが、あの頃は苦痛だった。
いや、学校制度って、思春期の繊細な若者をフォローするようには出来てないんだよね。
今さらながらそう思うよ。
怪物は誰か?
本作は全編にわたって「怪物は誰だ?」と問いかけている。
テーマとしては非常にわかりやすくて、ともすれば陳腐になりがちだが、本作は非常によく出来ていたと思う。
とにかく、主人公の周りにはクズかバカしか出てこない。そういった人達の対比として描かれるのが、店番をしている障碍者と、主人公より酷いイジメを受けている女の子なんですよね。
この女の子は、一人だけ机を教室の外に出されているんだけど、そのギミックがクライマックスでエンディングで生きてくる。
「僕は正しいことをしたい」、と願う主人公の「正しいこと」を実行した結果があのラストかと思うと色々とやり切れない。
ガッツポーズをした後に、たちまち泣きそうな顔になって、何かを吹っ切るかのように叫びだす、そこにエンディングテーマが被さっていくのが凄くいい。
バタリアンズによるオーディオコメンタリー
また、「リターン・オブ・ジーパーズ・クリーパーズ JEEPERS CREEPERS 3」」や「狼チャイルド」と同じく、DVD特典として、お笑いコンビ”バタリアンズ”の二人のオーディオコメンタリーが入ってます。
バタリアンズのお二人の、深い映画知識と、ウィットに富んだ解説、美少女の「屁」についてどう思うか等、非常の聴きごたえのある内容となっております。
邦画に限らず、日本のコンテンツ産業の表現については、おおむね同意見です。
表現が「ここまでならやっていい」というものばかりになってしまっており、表現が臆病な、無難なものばかりになっている気がする。
建前と、ここまでは言っていい「ストックフレーズ」で殴り合う、変な状況になっていると思う。
けっこう、サラッと流しちゃったけど、凄くいいこと言ってますよ!
個人的には、クライマックスからのエンディングへの入り方が、凄くかっこよかったので、その辺について語って欲しかったが、その辺りで、美少女の「屁」について延々と語りだすカオスっぷり。
たしかに、わざわざ屁を引っ掛けてくるメンタリティーは嫌だと思う。
DVD派の方は、ぜひ一度ご覧ください。
総評・感想まとめ
総評:♡♡♡♡♡♡♡♡♡ 9/10
●キャラクター………◎
・メインキャラは全員素晴らしい。
・いじめっ子のリーダーと、彼女の造形が秀逸。
●ストーリー………◎
・いじめシーンの胸糞悪さは、観ていて辛かった。かなり露悪的。
・↑そういったシーンからの、あのエンディングである。たまげた。
●カメラ・演出とう………◎
・映像はかなり綺麗です。また凝ったアングルの画も多い。
・ホラーだけではなく、コメディタッチのシーンや、お洒落なシーンもある。
●怪物……◎
・特殊メイクで表現。恐ろしいだけじゃなくて、哀しみを感じさせる。
・演じている子の上手さもあって、本作で一番人間らしい。
●その他・印象に残ったところ
・ところどころ出てくる日本語の文字。「髪べたべた」って……。
・美少女の「屁」については、さすがにどうなんだ!?
・エンディングへの入り方が最高にかっこいい!
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