本日紹介する作品は「黒い箱のアリス」です。
「包丁は使い方を間違えると危ない」と啓蒙する映画……ではなく、スペイン産のSF映画です。
目次
作品情報・スタッフ・キャスト
「黒い箱のアリス」
・製作年:2017年
・製作国:スペイン
・上映時間:105
・原題:「BLACK HOLLOW CAGE」
・監督:サドラック・ゴンサレス=ペレヨン
・製作総指揮:ディエゴ・ロドリゲス
・脚本:サドラック・ゴンサレス=ペレヨン(監督)
・音楽:セルヒオ・ラミス
・出演:ロウェナ・マクドネル/ジュリアン・ニコルソン/アイデ・リサンデル/マルク・プッジュネル/ウィル・ハドソン/ダニエル・M・ジェイコブス……etc.
予告編
↑クロックワークスで「未体験ゾーンの映画たち」参加作品。どのような層をターゲットにしているかのか、なんとなく分かると思う。
予告編でも包丁のシーンがあるが、これがダメな人は本編はやめておいた方がいい。
「黒い箱のアリス」:あらすじ
父親が起こした事故で、母親と右腕を失った少女アリス。人間の言葉を話せる装置を付けた犬を「ママ」と呼び、周囲に心を閉ざす。機械仕掛けの義手の訓練に明け暮れる日々を送るが、ある日、森の中で巨大な箱を見つける。
その箱の中から、アリスの筆跡の手紙が見つかる。その手紙には「彼らを信じないで」とだけ書かれていた。それと同じ頃、父親が森で怪我をしていた少女と、その弟を保護する。
奇妙な共同生活が始まる。果たして、「彼ら」とはこの姉弟のことなのか?
黒い箱の正体は?
「黒い箱のアリス」:感想/ネタバレ有
サドラック・ゴンサレス=ペレニョン監督のSF映画。
SF映画と言いますか、ファンタジー作品と言えばいいのか、もしくは、ただの説教映画なのか? ジャンル的にはよく分からん(笑)
「エクス・マキナ」と同じく、自然に囲まれた一軒家が舞台。
「犬とかなり正確に意思疎通できる装置」(バウリンガルの超凄いver.)や、ハイテクの義手など、現実よりちょっとだけ科学が進んでいる描写はある。
しかし、舞台になるのは、山奥の一軒家で、人里離れた別荘地なのか、それとも何らかの理由で人口が激減しているのか知らないが、とにかく人が出てこない。
「人口の密集した未来都市」だとか「人だけではなく色んなものがごちゃごた詰め込まれている宇宙船」みたいな要素はない。
「白」を基調とした照明に、自然に囲まれた風景はSF映画なのか疑わしい。
静かな映像が流れる中、所々にハイセンスなヴィジュアルと、「痛い」シーンが挟まる映画だ。
この映画、暴力シーンが本当に痛そうなんだよ……。
「美少女&美少年が可愛いな~」→包丁
ハリウッド映画で見慣れた「人が死ぬシーン」ではなく、ドキュメンタリー映像ぽく撮ってる気がする。臨場感たっぷりの映像は、目の前で見ている気分にさせる。
人が致命傷を負う。
↓
(画面が切り替わる)刺された人のアップ&何か末期の台詞。
↓
(画面が切り替わる)それをみとる人。何か言う。
↓
(画面が切り替わる)刺された人死ぬ&表情アップ。
↓
(画面が切り替わる)みとった人、号泣(悲しい音楽が盛り上げる)
みたいなのではなく、本当に人が死ぬ様をあっさりと描く。へんな風にカメラを動かしたり、音楽を入れない。そのままワンカットで固定して撮る。
ドキュメンタリータッチといいますか、少し離れた場所でリアルタイムで観ているかのように錯覚させる。テレビの「衝撃映像」みたいな感じ。
あっさりしている割には「本当に痛そう」なんで血が苦手な人は注意した方がいい。
なんだか中学生の時に授業で読んだ、森鴎外の「高瀬舟」のカミソリ下りみたいだ。妙に「血」を連想させる撮り方なんだよね。
それが、美少女と美少年が向かい合っている、なんだかいけないものを見たかのような、耽美なシーンのあとに、「サクッ」と出てくるんで、余計にきつく感じる。
包丁の使い方啓蒙映画である。(※違います)
黒い箱の正体は?
前半はやや退屈なシーンが多い。
山奥の森に囲まれた屋敷にはSF的な要素は感じない。”バウリンガル”や今より進化した機械仕掛けの義手は出てくるが、見渡す限り自然なもので囲まれている。
キャラクターの説明的な台詞はなく、父と娘の言動から物語を読むしかない。白を基調とした明るい「画」が潔癖な印象を与える。コントラストのはっきりした映像が印象的だ。
そういった美しい中にも妙な違和感が潜んでいる。
基本的に静かな映像が続くため、中盤に話が動き出すまで退屈かもしれない。
話が動き出すと引き込まれるが、雰囲気映画なため、SFとしての統合性は期待しない方がいい。
非常によくあるSF的素材を使っている。
「〇〇〇パラドックス」だとか「世界線がどうのこうの」ってめんどくさい話には、一切触れない。本格的なSF映画というより「世にも奇妙な物語」みたいな感じだ。
高性能な義手や、”バウリンガル”の凄いバージョンも、あんまり絡んでこない。
”バウリンガル”に関しては、本当に高性能で犬と意思疎通が出来ているのか、少女が寂しさのあまり作り出した妄想なのか、はっきりしない感じが逆に良かったと思う。
”ママ”と呼ばれている犬は可愛い。主人公のアリスも可愛い。しかし、一番可愛いのが美少年というのがなんとも言えない。
で、それに「包丁」である。
暴力シーンがリアルに痛いタイプの映画だった。
作品の雰囲気は好きだよ。
総評・感想まとめ
総評:☆☆☆☆☆☆
●【よかったところ】
・包丁のシーン。
・映像が綺麗。
・なんとも言えない雰囲気がいい。
●【悪かったところ】
・包丁のシーン。
・やや難解。
・中盤まで話が動かない。
●雑多な感想
・包丁のシーン。
・人が死ぬシーンをリアルに撮るとこんな感じになる。
・暴力シーンが妙に生々しい。
・超高性能”バウリンガル”
・所々に耽美なシーンがある。
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