ゾンビ物の後味が悪い作品が続いてしまいますが……。
今回紹介する作品は「セル」です。
作品情報・スタッフ・キャスト
「セル」
・製作年:2016年
・製作国:アメリカ
・上映時間:98分 ※PG12
・原題:「CELL」 ・原作:スティーブン・キング
・監督:トッド・ウィリアムズ
・出演:ジョン・キューザック/サミュエル・L・ジャクソン/イザベル・ファーマン
予告編
「セル」:あらすじ
ボストン空港で携帯電話で話していた人々が突如として凶暴化。その場からなんとか逃げ出した画家のクレイは、地下で出会った車掌のトムと少女のアリスと共に安全地帯を探して旅に出るが………。
「セル」:感想/ネタバレ有
原作既読です。かなり前に図書館で借りて読んだので、内容はあまり詳しく覚えてないです(笑)
しかし映画版よりは希望の持てる終わり方だったと思います。
原作は上下2巻でけっこう長いです。
”セル”というのは携帯電話のことです。原作だとガラゲー風の携帯電話だったが、時代の流れか今回の映像化ではスマホです。
不完全燃焼?なB級映画。
まずはキャストについて。今作のサミュエル・L・ジャクソンは珍しくおとなしめである。
『キングコング 髑髏島の巨神』のサミュエル・L・ジャクソンが、数値に換算するとサミュエル・3L・ジャクソンだとすると、今回はサミュエル・0.5L・ジャクソンぐらい(当ブログ比)です。
そんな訳で、サミュエル・L・ジャクソンのファンの方にはちょっと残念な作品かも。
その代わりに、相方のジョン・キューザックが頑張っていてくれたが、この映画いまいち盛り上がりに欠ける。
それなりにお金がかかっていて、有名どころも出ている、さらに派手なゾンビ自主規制シーンもある割にはなんだか地味に感じた。
全体的に出来はいいが、いまいち盛り上がりに欠ける感じが始終付き纏う。
この作品ではゾンビみたいだがゾンビではない、よく分からない何かが襲ってくる。原作では、
「これは人類の進化の瞬間に立ち会ってるのでは?」
、みたいな大げさな話にまで発展する。
しかし映画では、「人類の進化がどうのこうの」といった話ではなく、あくまで「怪物の群れから逃れて安全地帯を目指す」といったオードソックスなゾンビ物としての描写が目立つ。
主人公たちが安全地帯を探して移動しているため、場面移動が多い。そのためちょっとしたロードムービーみたいになっている。
この映画がいまいち盛り上がりに欠けるのは、先に触れたがその理由は次の二点だと思う。
一つは話の作りが単調な点。
怪物が襲ってくる→主人公達は戦いながら逃げる→仲間が減る→新しい場所に辿り着き、新しい仲間が加わる→バージョンアップした敵が襲って来る→主人公達は戦いながら逃げる→以下繰り返しで話がワンパターンに感じでしまった。
もう一つは話が分かり辛い点だ。原作未読の人にはやや理解し辛いシーンが多かったと思う。
今どんな状況で、登場人物が何をやっているか理解できない内にさっさと先に進んでしまう事が多い。その為いまいち映画に入り込めなかった。
さらに主人公パーティー一行の入れ替わりの激しさがそれに拍車をかける。登場キャラクターの顔を覚える前に退場していくので、感情移入もあったものではない。
ついでにゾンビとの派手な戦闘シーンは、前半に集中しているので後半がややかったるい。
映画の後半では、寝ている人間の夢に干渉してくる敵が出てくる。そいつの精神攻撃によって、主人公達はだんだんと現実と夢の区別がつかなくなってくる。
その様子を映像と台詞で表現していくのだが、所々何が起こっているのかよくわからない箇所があった。
この手の気味悪さはハッキリと理解させる必要はなく、あくまで雰囲気で伝わればいいのだろう。それでも非常にモヤっとする。
長い原作を省略してよく分からない話にしてしまうぐらいなら、普通のゾンビ物にした方が良かったのではないか?
もしくは連続ドラマ形式でやった方が、小難しい設定をじっくり説明できて良かったんじゃないだろうか?
もう少し話を上手くまとめて、最初から最後まで緊張感が持続すればよかったとのではないかと思う。
カメラや演出、出ている俳優はいいので勿体ないと思う。
考察:怪物は何かのメタファーなのか?
このゾンビみたいな怪物が何を表しているかといえば、携帯電話を所かまわず使っている現代人に他ならないのではないか?
恐らく人類の歴史上これだけ短時間で世界中に広まった道具は他にないだろう。先進国、発展途上国、老若男女問わずここまで広まった物はない。そうなると全く意図しない形で、ある種の壮大な社会実験が繰り広げられている訳だ。これがどういった結果になるかなんて誰も予想出来ないだろうし、仮に後何十年か経った時にこの現象からなんらかのデーターが導き出されたとする。しかしそれに対して客観的な正しい判断を下せる人が残っているだろうかと。
さらにはここまで社会に必要なインフラとして定着してしまうと、仮になんらかの悪い影響が科学的な根拠を基に明確になったとする。しかしもう携帯端末がない生活なんて考えられないわけだ。その時の社会的混乱は凄いもんだろうなーと。
……まぁ柄にもなく真面目な事を考えてしまった。
この映画は後味の悪い終わり方をする。散々頑張ったけれど主人公も”あっち側”に取り込まれちゃったって解釈でいいかと。しかしこのゾンビもどきが携帯電話ユーザーのメタファーだとしよう。そういった仮説の元に話を解釈すると、携帯電話だとかパソコンだとかを嫌っていた人が、なんだかんだ言ってそういう物を使い始めただけのお話なのではないだろうか?
皆さんの周りにもいませんかね?こんな人。何度もLineやTwitterやろうぜと誘っても動かなかったくせに、恋人が出来た途端に嬉々として始める奴。
さらには自分が始めた途端に、最新機種を買ってこっちになんか言ってくる奴(ノ`Д´)ノ
もしくは機械音痴だった癖に孫が出来た途端に、パソコンとデジカメ一式揃える親父。
そんな風に考えるとバットエンドでもなんでもない気がします。
エンターテイメント大作という程金はかかってないが、低予算のB級映画と表現するにはお金がかかってる。ゾンビホラーでもないし、そうかといって他のジャンルとはいえない。なんだか全体的にモヤっとする評価に困る作品だと思う。
登場人物の入れ替わりも激しいのであんまり感情移入も出来ない。さらにストーリーがいまいち分かりにくい。おそらく原作の上下2巻分を圧縮しているから、こういった事になってしまったんでしょうかね。
その辺が、返す返すも残念でならない。
スティーブン・キング御大なりに、現代社会の問題に一石を投じてみた感じですが、あまり共感が得られる内容じゃないような気がします。
総評・感想まとめ
総評:♡♡♡♡♡♡ 6/10
●キャラクター………〇
・キャラはしっかりしている。
・サミュエル・L・ジャクソンはおとなしめ。 ・演技は安心して観ていられる人が多い。
●ストーリー………△
・説明不足感がある。
・上下二巻の長編小説を短くまとめているせいか、やや分かりにくい。
●カメラ・演出とう………〇
・低予算としては綺麗に撮れている。
・ただし、大作映画に比べるとかなり苦しい。
●怪物……△
・怪物の設定は面白いと思う。しかし描き方が原作小説ほど上手く説明出来ていない。
・あんまりゾンビっぽくない。
●その他・印象に残ったところ
・登場人物の入れ替わりが激しい。
・ゾンビはアグレッシブに襲って来る。
・ゾンビ映画だけではなく、ロードムービーみたいなところもある。
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