今回紹介する作品は「HUNT/餌 ハント・エサ」です。
ネタバレを見る前に一度観賞する事を勧める。
【キャスト・スタッフ・データー】
「HUNT/餌 ハント・エサ」
・製作年:2017年
・製作国:オランダ
・上映時間:107分
・原題:「PREY」
監督:ディック・マース『ナイトメア・オブ・サンタクロース』
製作:デーヴ・スクラム/マリア・ピータース
出演:ソフィー・ヴァン・ウィンデン/ジュリアン・ルーマン/マーク・フロスト/リスナ・クルル……etc.
予告編
『HUNT/餌 ハント・エサ』:あらすじ
アムステルダム郊外で、一家惨殺事件が起こる。
遺体はバラバラに引き裂かれており人間の仕業だとは思えない。
相談を受けた獣医のリジ―は、死体の痕跡からライオンの仕業を疑うが、警察は信じようとしない。
そんな中、さらなる犠牲者が出てしまい……。
『HUNT/餌 ハント・エサ』:感想/ネタバレ有
《ライオンは勇気の象徴なのさ!》
「人気のある動物ランキング」で安定して高い地位にあるライオン。おそらく、ゾウやゴリラと並び動物園の人気者ライオン。
そんな人気キャラを「人喰いモンスター」として描いている作品は意外に少ない。
(↑これではない(笑) しかし、歯磨き粉が襲って来る映画を作りかねないのが、このジャンルの怖い所だ)
”アフリカ”だの”ゾンビ”みたいな、大雑把な括りで登場する事がほとんどだ。
「モンパニ」「B級映画」枠ではないが個人的には『ゴースト&ダークネス』がお勧めだ。
(↑歴史上実在した「ツァボの人食いライオン」を描いた作品。ノリに乗ってる頃の、マイケル・ダグラスとヴァル・キルマーが出演している。劇場公開作品)
よく知られた動物であり、人気者の割には、モンパニネタにされていないライオン。
サメとライオン、いったいどこで差がついたのか? 環境の違い、慢心……と思わずテンプレ通りの言葉を言いたくなってしまった。
ついでに哺乳類、毛に覆われた生き物は、イマイチ不気味さを出しにくい、というモフモフ毛むくじゃらならでは問題も大きい。
トラや熊を題材にしたモンパニ映画が、どんな出来栄えなのか考えれば、この問題の大変さが理解出来るだろう。
そんな難しい”毛むくじゃら枠”に挑戦者が現れた。
それも、映画輸出国家としては、やや、マイナーなイメージのあるオランダからやって来た!
なんにしろ、いろんな国のモンパニ映画映画を、観られるのは嬉しい事だ。
さて本作では、オランダ・アムステルダムの街中にライオンが出没する。
この「街中」+「野生動物」という組み合わせも、シリアスな雰囲気の映画では、かなり珍しいのではないだろうか?
(ふざけたノリの作品は、アサイラムがあるので除外。特にサメとワニ)
劇中、何故ライオンが街中をうろついてるのか、最後まで説明されない。
モンスターパニックで、細かい設定を気にする方が、間違っているのかもしれないが(笑)
そんな訳でライオンが、アムステルダムの街を全力疾走する姿が、拝める。
石畳の上を、走ったら足の裏が痛くなりそうだなぁー、といらん心配をしてしまったが、それ追っかけられてる配達の兄ちゃんの前でも、同じこと言えんの?
石畳で覆われたヨーロッパの街並み+本来なら生息しないはずの野生動物の組み合わせが面白い。
電車の中、公園、建物内と、人工物に囲まれた環境で、ライオンが襲って来るのが面白い。
《人工VS自然》
さて本作品を観賞した人達に、強いインパクトを残す人物がいる。
ハンターのジャック・デラルーだ。
ベテランハンターの肩書で登場した彼は、足が一本しかなく、電動の車椅子に乗って我々の前に現れる。
最近流行の、ポリティカルコネクトに配慮しただけのキャラかと思ったが、観賞しているうちに、それが間違いだと気づく。
彼は、キャタピラ式の電動車椅子で生身もよりも早く走り、彼の使う狙撃銃は、劇中最強の威力を誇る。
「人工的なテクノロジーにより自身の機能を強化・拡張する」
それこそが、人間の進化の方向性であり、また今日の文明の姿でもある。
さらに、長年の狩猟の経験を持った彼は、劇中で最も「自然を制する力」を持ったキャラクターとして、描かれている。
その彼が、対決する相手はライオン。
「百獣の王」であり、自然界最強の一角。
街中に突如として現れた猛獣は、電車・公園・ゴルフ場でやりたい放題。
この「公園」「ゴルフ場」も人間が都市の隙間に作った「人工的に作り上げた自然」である。
その人間が作り上げた自然、人間の所有物の中で、野生動物であるライオンに、やりたい放題やられているわけだ。
そこにやってきたのが、「自然を制する力」を持つデラルー。
ここに「人工vs自然」という闘いの火ぶたが切って落とされる。
この「人工VS自然」が、いつしか二匹の雄の存在を掛けた殺し合い「野生VS野生」にシフトしていくのが、お約束だが非常にいい。
クライマックスで、とある事情でピンチになったデラルーの決断・行動。
それこそが、人間は、人工物を作り出すだけではなく、生物の中で「最も発達した知性と・感情を持った生き物」であり、意思の強さが人間の強さを決定する、という事の証明に他ならない。
『悪魔のいけにえ』などのホラー映画では弱者、足手まといとして描かれていた車椅子キャラが、強キャラとして描かれるだけではなく、怪物と戦う事にちゃんとしたテーマを付与している。
都会で、ライオンが暴れまわる事を、ちゃんとしたテーマに落とし込んだ作品。
ライオンのCGも出来がよく、キャストも上手かった。
この手のモンパニ映画では、よくできた佳作に入ると思う。
しかし、考えようによっては、なんだか知らないうちに、都会に連れて来られたライオンが、ひたすら酷い目に遭うだけの映画とも言えよう。
ライオン:「母さん、都会は怖い所です」
モンパニ映画としては、かなり出来がいいので是非観て欲しい。
P.S: どうでもいいが、この作品に出て来る登場人物達は、街中だろうが何だろうが、老若男女問わずナイフを持ち歩いているのが、カルチャーショック。
多分、日本が異常に厳しいだけなんだろうが、皆当り前のように、ナイフを所持していて笑った。
結局、なんで都会にライオンが、いたのかは明かされない。
アサイラムなら「いつもの事である」で済ませたくなるが、シリアスなノリの作品だから、その辺は、もうちょっと説明して欲しかった。
ドラマパートはよく出来ていたが、事件の原因はぼかしたままだった。
総評・感想まとめ
総評:♡♡♡♡♡♡♡ 7/10
●キャラクター………◎
・キャラクターの造形はかなりいい。キャラクターがいいため、長いヒューマンドラマパートも、安心して観ていられる。
・特に、後半大活躍するハンターのデタルーは、格好良かった。
●ストーリー………○
・序盤・中盤は、ライオンがそれほど登場せず退屈である。人間ドラマ中心。
・それでも、ラスト20分の怒涛の展開が凄く、そのためだけでも観る価値はある。
●カメラ・演出とう………○
・カメラ・音響共に高いレベルでまとまっている。
・
●怪物……○
・ライオンはCGで表現。かなり出来がいい。
・えようによっては、一番の被害者はライオン。
●その他・印象に残ったところ
・都会+ライオンの組み合わせ。
・ハンターのデラルーのキャラがいい。
・キャストが上手いので、人間ドラマパートも安定している。
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