ロシア映画「ラブレス」感想&レビュー ~「自己愛」という現代病~

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ドラマ

本日紹介する作品は、ロシア映画「ラブレス」です。

監督はアンドレイ・ズビャギンツェフ

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作品情報・スタッフ・キャスト

ラブレス
製作年:2017年
製作国:ロシア/フランス/ベルギー/ドイツ
上映時間:127分
原題:「Loveless 」  R15作品

監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ
脚本:オレグ・ネギン
音楽:エフゲニー・ガリペイン
出演:マルヤ―ナ・スピヴァク/アレクセイ・ロズィン/マトヴェイ/ノヴィコフ/マリーナ/ワシリーエワ/アンドリス・ケイス/セルゲイ・ボリソフ……etc.

監督は「父、帰る」裁かれるは善人のみ」で知られるアンドレイ・ズビャギンツェフ

本作品は、カンヌ国際映画祭では審査員賞を獲得作品で、2018年のアカデミー外国語映画賞にもノミネートされているのだとか。

予告編

 

「Loveless」あらすじ

一流企業で働くボリスと美容サロンを経営するジェーニャの夫婦。離婚協議中のふたりにはそれぞれすでに別のパートナーがいて、早く新しい生活に入りたいと苛立ちを募らせていた。12歳になる息子のアレクセイをどちらが引き取るかについて言い争い、罵り合うふたり。耳をふさぎながら両親の口論を聞いていたアレクセイはある朝、学校に出かけたまま行方不明になってしまう。息子は無事に見つかるのだろうか、それとも……

~Amazonビデオ作品紹介から抜粋~

 

家族がバラバラになっていく様を、現代のロシアの風景を絡めて描く作品。

かなり胸糞悪いお話。予告編ではサスペンス要素があるように宣戦しているが、ほぼヒューマンドラマオンリーである。内容は非常に暗い

観ていて非常にしんどい気分になる、重い話である。

感想/ネタバレ有

配給会社にアルバトロスのロゴが見えるが、同時に KLOCX WOLX(クロックワークス)も一枚噛んでいる。BS10スターチャンネルでやたらと押していた作品。

KLOCX WOLX(クロックワークス)が関わっている時点で、シリアスな作品だということが分かる。「エロい・グロい・下らない」と三拍子そろったバカ映画のリリースに定評のあるアルバトロスだが、「暗い・辛い・よく分からない」真面目な作品もちょくちょくリリースしている。

本作は後者である。

KLOCX WOLX(クロックワークス)特有の予告編の下手さ、と言うよりは、ジャンル分けがしにくい、説明するのが難しい作品です。

家族の絆がテーマの、かなり深刻で暗い作品と言っていいだろう。予告編では「ミステリー・サスペンス」みたいな紹介のされ方だが、そういった要素はない

むしろ、そんな言葉が出て来たことが「ミステリー」「サスペンス」である。

(なんのこっちゃ…)

暗くて重い作品を「とりあえず観ろ!」というのは、やや酷だが、観てみないと分からない作品である。

雰囲気は綺麗な映画だが、重い作品。映像やロケーションは綺麗だった。特に、凍てついてロシアの荒野が、寂しいが妙に心惹かれる美しさだ。

127分と、やや長いのも勧め辛い。

 

みていて辛いです。

最初から最後までタイトル通り「Loveless 」である。

本作品は初っ端から、観ていて辛いシーンが多い。不仲の両親がお互いに罵り合うのだが、その罵詈雑言が、まぁリアルな事といったら!

登場人物が、基本的に他人に無関心で、関心があるのは自分のことだけ。特に、ジェーニャのキャラクターがそれを象徴していた。

「子供なんて最初から作らなければよかった」なんて台詞、間違っても吐くもんじゃないよ。

聞いていて、胸が痛くなるような台詞がポンポン出てくる。その罵り合いを毎日聞かされる、息子のアレクセイとしたら、たまったものではない。これ、将来絶対グレるか、引きこもりになるやつやん。予告編でも映っているが、聞いちゃいけない言葉を、扉の裏で泣きながら聞いてるシーンは、観ているこっちも辛くなる。

そんなこんなで、好き勝手やってる両親は、アレクセイが失踪しても、お互い気づかない。

やっとこさ失踪を届け出て、捜査が開始されるも、警察のあんまりやる気がなさそう。

それに対して、怒りをあらわにするボリスジェーニャだが、今までの様子を観ている視聴者は「どの口がそれをほざくか!」てな感じだろう。

救いと言えば、アレクセイにも友達がいた事と、捜索のボランティアが熱心なことぐらいだろうか?

機能不全な家庭と「国家」

本作品は機能不全に陥った過程を描くと同時に、「国家」やそれにともなう「社会構造」の不備についても描かれた作品なのではないか。

近年急速に進むグローバル化&デジタル化に伴う社会の変化は、どこの国でも大きな混乱を巻き起こしている。ここまで、人と物と情報があらゆる垣根を超えて行き来する時代は、人類の歴史始まって以降最大の変化である。

それに加えてロシアは、旧ソビエト時代社会主義国家のリーダーとしての役割、歴史が下ってソビエトの崩壊、それに伴う冷戦の終結と、激しい変化があった。

そういった「国家」「社会構造」という大きな枠組みに属する最小の単位としての「家庭」を描く事によって、問題提起をやっているのではないか。

そういった主題があるのなら、本作の後半で、ジェーニャの母親を尋ねにウクライナのキエフ地方を尋ねるシーンも重大な意味を持つのではないか。

そこで待っていたのは、ロシアよりも貧しい街並み。さらに、ジェーニャの母親も、娘にあんまり愛情を持っていたわけではなさそう。当然孫のアレクセイにも、あんまり関心なし。

ここにきてタイトルの「Loveless 」なのは、ボリスとジェーニャだけではなく、彼らのまた「Loveless 」の犠牲者であり、気づかないうちに自分の子供にも同じ仕打ちをしていたのである。

機能不全に陥っている家庭の原因は、国家の衰退・文化的混乱、そういった面から描こうとしているのだろうか?

現代病とも言える「自己愛」をどこまでも拡大していくと、やがて「家族」も崩壊し、しいては「国家」や「社会構造」もダメになる、そういったメッセージもあるかもしれない。

そういった場面を描きながら、アレクセイの捜索が続くが、やがて打ち切られて、月日が経つ。

冒頭の場面でアレクセイが遊んでいた、体操のリボンとそれが絡んだ川沿いの木を映して映画は、幕を閉じる。

現代病ともいうべき「自己愛」についてのお話を、「国家」という一番大きな「家族」との対比で描いた作品なのかな~?、と思った。

ロシアの社会ってこんなに冷たいのだろうか?、そんな風に思ってしまうほど、冷たい人物しか画面に登場しない。

総評・感想まとめ

総評:☆☆☆☆☆☆ 6/10
【よかったところ】
・役者の演技は皆、上手い
・観ているだけで寒そうなロシアの景色。
・↑の景色も含めて、ロシアの建物とうは興味深い。

【悪かったところ】
・やや冗長に感じる長さ。もう少し短くまとめる事も出来たのではないか。
・暗い、救いがない。

雑多な感想
・サスペンス要素はない。クロックワークス特有の予告編の下手さあり。
・全く救いがない。アレクセイ(ノД`)・゜・。

・警官が、やる気があるのかないのかイマイチ分からん。

 

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