本日紹介する作品は「アガサ」です。
パッケージは「修道院を舞台にしたオカルトホラー」ぽいが……。
目次
作品情報・スタッフ・キャスト
「アガサ」
・製作年:2018年
・製作国:アメリカ
・上映時間:103分
・原題:「St.Agatha」
・監督:ダーレン・リン・バウズマン
・製作:タラ・アンズリー
・撮影:ジョセフ・ホワイト
・音楽:マーク・セイフリッツ
・出演:サブリナ・カーン/コートニー・ハルヴァーソン/キャロリン・ヘネシー/リンジー・サイム……etc.
※監督は「ソウ」シリーズのダーレン・リン・バウズマン。そんなわけで、「容赦ない」痛いシーン盛沢山です。
予告編
「アガサ」:あらすじ
1950年代、ジョージア州の小さな町で、妊娠している若い女性アガサが修道院に避難を求めてくる。だがここには、多くの秘密と厳粛なルールがあった。この修道院で過ごす中でシスター達の怪しい行動と真実を知った時、院内に潜む存在に気がつく…。彼女は無事にこの修道院から生きて出られるのか-。
~Amazon~作品紹介より抜粋~
↑作品紹介では主人公の名前は”アガサ”となってますが、実際はメアリーです。
家族と色々とあった元不良少女のメアリーが、修道院を訪れるシーンから物語はスタートする。そこから”アガサ”の名前が出てくるのはどうしてなのか? この修道院の闇の部分が描かれます。
ちなみに、”メアリー”は聖母にちなんだ名前だそうです。
ついでに、”アガサ”というのは、「乳房を切り取られる拷問をうけた、キリスト教の聖人」の名前だとか。
※参考:シチリアのアガタ
「アガサ」:感想/ネタバレ有
「画」の取り方は、昔ながらのクラシックホラースタイルである。それ+嫌な雰囲気と設定・音楽で引っ張る感じだ。その辺りが、一昔前のホラー映画みたいだ。
パッケージやあらすじからは、悪霊とか悪魔なんか出てくるオカルトホラーを想像するが、狂気におちいった人間を描いたサイコスペンス・スリラーといった感じの作品です。
「妊娠中の糧を求めて修道院を頼った若い女性が、高圧的で支配的な修道女たちによって、徐々に追い詰められていく。さらには、修道院には、裏の顔があって……」といったプロットだ。
わかりやすく言えば「妊婦虐待映画」(どんな例えやねん…)
妊婦さんは観ちゃだめ。
(そもそも、妊婦にホラー映画ってどうななんでしょうか……?)
正直、クライマックスに差し掛かるまで、ひたすら胸糞な展開を見続けなけばならないため、かなり精神を削られる作品。
さらに、唐突に画的にかなり「痛い」描写が待っているため、注意が必要だ。
(まぁ、監督が「ソウ」シリーズの人だから、多少はねぇ……)
「あ、そう……」
女性を狭い世界に閉じ込めるのは、同じ女性である。
本作はフェミニズム的な観点から観ると、かなり分かりやすいと思う。ただし「悪いのは男だ!こらー!」てなメッセージではなく「女の敵は女」みたいな感じである。(※実際には、もうちょっと複雑なメッセージだよ)
とにかく、この修道女の皆さん、妊婦たちを「自立した人格を持った人間」として扱わない。とにかく、高圧的で酷い。
・時代設定が1950年代→アメリカでフェミニズム運動が盛んになるのは、もう少し後の1960年代・70年代。
・主人公がつけられる名前が”アガサ”→乳房を切除される拷問を受けた聖人の名前。「乳房」=「女性性」みたいに考えると、「女性」の排除、否定ととれる。
・監視下に置かれた修道院・棺桶→「女性を狭い価値観・世界に閉じ込める」のメタファー。
・舌を切り取られる女性→「女性から抗議の声をあげさせない」のメタファー。外的原因の事故や拷問で、「声を奪われたヒロイン」というのは、この手のテーマの作品だと、度々みられる。
ex.「ブリムストーン」、冲方丁「マルドゥック」シリーズなど。
といったように「女性を狭い価値観・世界に閉じ込めるのは同じ女性である」みたいな構図で撮っている。それでいて、悪役の修道女たちも、恐らく過去に同じ仕打ちを受けているのが、所々から察せられて何とも言えない嫌な気分になる。
ただし、この修道女の皆さんは、ひじょ~に、胸糞の悪い事ばっかりやるんで、クライマックスの反撃シーンまで、鑑賞していて気分が悪くなるから注意。
ついでに、ヒロインが「過去に弟が浴室で溺れ死んだ」トラウマに苛まれるシーンが、何度かあるが、この「浴室」を「狭い場所・水のある場所」=「子宮」のメタファーとしてとらえるべきなのか?
そうすると「流産への恐怖」=「子供を失うことへの恐怖」という図が成立するから、どうしても修道院から脱出する動機になるんだと思う。そういった動機があるから、あれだけ失敗しても、何度でも脱出に挑戦したんだと思う。
上述したようなテーマのある作品だと思う。そうでなきゃ、最後のカタルシスまでのために、ひたすら「胸糞悪い」シーンを入れただけの「趣味の悪い」映画になってしまう。
うん、まぁ、「ソウ」シリーズの監督なんで、「趣味の悪い」は否定できないか(笑)
残酷なシーン・痛いシーンを、撮る事自体が目的に感じられるのは、僕はあんまり好きになれないです。
ホラー・サスペンス映画としての完成度。
ホラー・サスペンス映画としても面白かったと思う。小さい伏線(というよりはギミック)をそこら中に入れて、最後にそれを全部使う感じ。サスペンス要素はかなり丁寧に作ってあるし、ホラー映画としてもクラシックスタイルの「画」の撮り方で面白かったと思う。
なによりも、「イカレタ修道女の皆さん」の演技が素晴らしい。特に、院長の「怪物」ぶりは怖い。(やってること自体は、小悪党なのが、またいや~な気分になる)
ただし、ミスリードはふんだんにあるし、真剣に観つつづけるには、ちょっと「辛い・痛い」シーンが多すぎる。パッケージの幽霊みたいなのは気にしちゃダメ。
クライマックスの展開は熱いが、そこに行くまでが大変。
この「アガサ」の評価をネットで見てみると「胸糞悪いので☆-1」みたいな感想が多く、その辺りは納得である。
鑑賞する人はその辺を覚悟して観よう。
総評・感想まとめ
総評:☆☆☆☆☆☆☆ 7/10
●【よかったところ】
・イカれた修道女の皆さん、演技がグッド!
・ヒロインの不屈の精神がいい。
・クラシックスタイルの撮り方は好き。
●【悪かったところ】
・かなり「痛い」映像が出てくるためキツイ。
・かなり胸糞悪いシーンが多い。
・伏線の貼り方が丁寧な分、展開がやや遅い。
●雑多な感想
・出てくる男がことごとく「使えない」のは笑う。
・個人的に、射撃が上手い尼さんがツボだった。
・妊婦たちがどれほど「闇落ち」しているかを、顔に当たる光の量で表現しているシーンは面白かった。
・「舌切り」の下りは、あんなに丁寧に撮らなくていい。
・院長の「怪物」ぶりが、下手なモンスター映画のモンスターよりも怖い。オチもモンスターぽい(笑)
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