「静かなる復讐」感想&レビュー ~静かに淡々と実行される復讐~

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サスペンス映画

本日紹介する作品は「静かなる復讐」です。

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作品情報・スタッフ・キャスト

「静かなる復讐」/「物静かな男の復讐」
製作年:2016年
製作国:スペイン    ※R-15作品

上映時間:92
原題:「TARDE PARA LA IRA」/「THE FURY OF A PATIENT」

監督:ラウール・アレバロ
製作総指揮:ベアトリス・ボデガス
脚本:ダビド・プリード
音楽:バネッサ・ガルデ/ルシオ・ゴドイ
出演:アントニオ・デ・ラ・トレ/ルイス・カイェホ/ラウール・ヒメネス/ルト・ディアス/マノロ・ソロ……etc.

スペインのアカデミー賞にあたる「ゴヤ賞」でいくつかの賞をとっている作品。

配給はKLOCK WORX(クロックワークス)。例のごとくアート性の高い難解な作品である。

予告編

「静かなる復讐」:あらすじ

アナは家族が経営する寂れた町のバーで働いている。息子が一人いるが、夫は強盗事件に関わった罪で服役中。その出所を目前に控え、アナは漠然と将来に対する不安を抱えていた。ある日アナは、店に来た風変わりな男に気付く。他の男たちと違って大声で下品な冗談も言わず、物静かで身なりも比較的きちんとしている。どこかミステリアスなその男=ホセは毎日店にやってきて、徐々に客たちや店で働くアナの家族とも打ち解けていく…。

~Amazonビデオ・作品あらすじ欄より抜粋~

全てを失った男の、静かな復讐劇を描いた作品。

 

「静かなる復讐」:感想/ネタバレ有

「強盗団の襲撃によって全てを失った男・ホセが、復讐のためにある女性・アナに近づくが、次第に本気になってしまう。そうこうしている内に、ターゲットが出所してくる。ホセは出所してきたアナの夫であり、強盗団のドライバー役だった男・クーロを脅して、仲間の居場所を吐かせようとする。クーロを脅迫しながら、強盗団のメンバーをたんたんと処刑していくホセ。

そして、ホセの前に残酷な事実が明らかになり……」

というのが本作の概要である。読んでもらえば分かる通り、あらすじは、この手の「リベンジ物」の中でのある一定の様式美を踏襲している。ある意味「コテコテ」の作品なんだが、スペイン映画という、ややマイナーな部類に入る。

ついでに「スペインのアカデミー賞」と言われる「ゴヤ賞」の幾つかのジャンルで受賞しており、アート性の高い・意識高い系の映画である。

宣伝通りの「アクション・サスペンス映画」を期待して観ると裏切られた気分になると思う。ハリウッド映画の派手な「リベンジ物」を期待して鑑賞するのはやめよう(笑)

復讐自体は、かなり淡々と静かに実行される。タイトル通り「静かなる復讐」である。ちなみに本作は、もともとはNetflixで先行配信されたが、その時のタイトルは「物静かな男の復讐」という邦題だった。

どっちでもあっている気がするが、なんでまぁ、変えたんだろう?

「顔」を描いた作品。

本作は物静かな男・ホセが、淡々と復讐する様が描かれている。出所したクーロと共に、強盗団の元を訪ねていくんだが、その時強盗団のメンバーは、自分たちのやったことは忘れて、「普通の市民」としての幸福を謳歌している。彼らには、ホセは昔の仲間が連れて来た客人に過ぎないわけです。

その客人が、いきなり切れる。まぁ、事情を知っている視聴者からすると、婚約者を殺して父親を意識不明の重体にした奴らなんて、しかるべき報いを受けて当然なんだが、強盗団にしたら、青天の霹靂である。

日常の普通の「顔」だった男が、怒りの臨界に達したとき行われる暴力。そのシーンが淡々と描かれるのと、「怒りの臨界」を迎えた男の「静かなる激怒の顔」が描かれる。

この「顔」の描き方が上手い。

頭の中で「プチッ…」と何かが弾ける瞬間を描いているんだが、「間」の取り方と、音楽の使い方が上手い。

そして。行われる報復。サクサクサクサク……(刃物が刺さる音)。大惨事!な割には、けっこう行き当たりばったりな復讐劇が描かれる。怖い。

暴力シーンは本当に痛そう。

役者の演技力だけで語るスタイルのため、観ていてあんまりカタルシスはない。

人間の精神の限界が、堪忍袋の緒が切れる瞬間の「顔」を描いた作品である。怖い。

振り上げた拳を、落としたが……。

本作では、男たちのそれぞれの対比が鮮やかだ。

主人公のホセは、「もうすぐ夫になるはずだった男」であり、ホセに仕方がなく協力するクーロは「夫であり、父親である」。さらに最初に復讐される男サンディは、ホセと同じく「もうすぐ夫になる男」で、二人目のターゲットのフリートは「夫であり、もうすぐ父親になる男」だった。

さらに最後のターゲットであり、終盤に明らかになる〇〇は、クーロと同じく「夫であり父親である」。

本来なら、ホセも順調にそうやって「幸せな男」としてステップアップしてくはずだったんだよね。

す男と・殺される男生き残った男と・死んだ男の対比が鮮明で、静かに実行される復讐とあいまって、妙な無常観を出している。

結局、復讐は完遂されるんだけど、主人公のホセは、黙って寂しそうに去っていく。あんまり救いがない作品です。

「振り上げた拳を、落としたが……」といった感じで、誰も幸せになっていないし、救われない。

もちろん、観ている視聴者のなんだか、スッキリしない。

人間の精神が、「グチャっ…」音を立てて壊れるのを描いている映画なんだが、そういったところは「ビューティフル・デイ」によく似ている。しかし、なんらかのカタルシスがあった「ビューティフル・デイ」と違い、こっちは誰も救われない作品だった。

 

 

役者の演技は素晴らしかったし、「間」の取り方や、音楽の使い方はよかったが、個人的にはイマイチな作品だった。ちょっと地味渋過ぎる作品かなぁー。

 

ところで、ホセはアナに接近して、クーロとアナの穴兄弟(笑)になってるが、それがあのエンディングに関係あるのか?

まぁ、分かりやすい「情の移り方」だとは思うが、なんか釈然としない。

どうでもいいけど、スペインって刑務所に入っていても、しかるべき手順を踏めば、奥さんといちゃついていいわけ?

教えてエロい人!!

総評・感想まとめ

総評:☆☆☆☆☆ 5/10
【よかったところ】
・音楽の使い方が面白い。ラテン系の陽気な音楽で、人の精神が「ぐちゃっ」となるのを表現している。
・キャラクターの対比が面白い。
・役者の演技が渋い。

【悪かったところ】
・かなり淡々と描かれるので、サスペンスアクションみたいなジャンルを期待すると、がっかりする。
・良くも悪くもアート性の高さ。

・序盤に場面転換が多すぎる。

 

雑多な感想
・先行公開のNetflixでは、タイトルが違う。「物静かな男の復讐」
・暴力シーンは本当に痛そう。

 

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「ビューティフル・デイ」

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