今回紹介する作品は「シェイプ・オブ・ウォーター」です。
半魚人が(正当防衛的な意味で)暴れまわる、ストレンジ・ラブストーリーです。
作品情報・スタッフ・キャスト
「シェイプ・オブ・ウォーター」
・製作年:2017年
・製作国:アメリカ
・上映時間:123分
・原題:「The Shape Of Water」
・監督:ギレルモ・デル・トロ
・製作:ギレルモ・デル・トロ/J・マイルズ・デイル ・脚本:ギレルモ・デル・トロ/ヴァネッサ・テイラー ・撮影:ダン・ローストセン ・音楽:アレクサンドル・デスプラ
・出演:サリー・ホーキンス/マイケル・シャノン/リチャード・ジェンキンス/ダグ・ジョーンズ/オクタヴィア・スペンサー/マイケル・スタールバーグ……etc.
監督は「パシフィック・リム」「パンズラビリンス」のギレルモ・デル・トロ。
主演は「GODZILLA」(2014年)のサリー・ホーキンス。共演にオクタビア・スペンサー、マイケル・シャノン。半魚人の中の人を「ヘル・ボーイ」でもお馴染みのダグ・ジョーンズ。
予告編
「シェイプ・オブ・ウォーター」:あらすじ
1962年のアメリカ。発話障害のあるイライザは、機密機関である「航空宇宙研究センター」で清掃員として働いていた。アパートの隣人であるゲイのジャイルズ、職場の同僚でなにかとフォローしてくれるアフリカ系の女性のゼルダに支えられながら平穏に暮らしていたが、心の底では恋人のいない孤独を抱えていた。
ある日、職場の新メンバーであるホフテストラー博士が、奇妙な生物の入ったタンクを運び込む。
アマゾンの奥地で現地人に神の様に崇められていた”彼”。そんな奇妙だが不思議な魅力を持った”彼”に惹かれるイライザは、周囲の目を盗んで会いに行くが……。
やがて二人の間には絆が芽生えるが、そんな中イライザは”彼”が国家的なプロジェクトの為の実験の犠牲となることを知ってしまい……。
感想/ネタバレ有
半魚人のクオリティー
まず最初に「この映画はモンスターパニック映画やホラー映画ではない」という事は百も承知なんですが、当ブログは「怪物映画がどうのこうの~」と言ってるブログです。つまり管理人としては、どうしても半魚人クオリティーについて触れないといけない訳なんですよ。
いや、僕も辛いんだよ(嬉しそうな顔)
さて半魚人と言えば、ビックフット、チュパカブラに並ぶ「怪物映画界の三大地雷」である。
毎回着ぐるみ感満載と言いますか、「中古のダイバースーツを改造しました」みたいなクオリティーなのは皆さん知っての通りです。
(以下参考作品↓)
正直予算がどうのこうのじゃなくて、半分は
「戦犯:J.V.Dのディープレッドなんじゃね?」と思えなくもない。
しかし本作では、最初から最後まで非常にリアルな半魚人が楽しめる。
劇中イライザが”彼”を始めて見た時から、特別な何かを感じた様に我々視聴者もこう感じるはずだ
「この半魚人出来がいい」
…予算と技術があるってなんて素晴らしいんだ!
こういった”異形の者”(モンスター)をその場にいるかの様に作るのは、非常に金がかかる。
そんな”金食い虫”の人喰いモンスターをずーと画面に出しておくわけにはいかない。
よって「モンスターの存在は声や物音で表現」「暗がりでパーツだけ出す」「造形の粗は画面を揺らしてカバー」「怪物そっちのけで人間同士の修羅場が始まる」と怪物映画なのに、怪物がほとんど出て来ない訳だ。
その怪物がほとんど出て来ない=潜んでいる=ホラー映画の敵役にピッタリの式が成立する。
例外:怪物は開き直ってハリボテ。
そんな風に怪物は文字通りの”モンスター”となってしまう事が多いのだが、本作『シェイプ・オブ・ウォーター』はちょっと違う。
なんと半魚人と人間の女性との間に恋が芽生える。恋愛映画において「相手を見つめる・相手に見つめられる」は重要である。
よってここに「長時間見つめてもOKな出来のいい半魚人」が誕生したのだ!
まぁ、そんな管理人のアホな話は置いておくとして、監督のギレルモ・デル・トロ監督の”クリーチャー愛”の凄さが伝わってくる作品。
さて繰り返しになってしまうが、本作では最初から最後までリアルな半魚人の姿を楽しむ事ができる。
細かな質感やギミックが凄い。本当にこういう生物がいる気がしてくる。
ちなみに、半魚人を演じているダグ・ジョーンズは『ヘルボーイ』でも半魚人のエイブ・サピエンを演じている。ついでにギレルモ・デル・トロ監督の過去作品『ミミック』でも”ロングジョン”役、『エイリアン・バスターズ』でもエイリアン役と、すっかり”怪物の中の人”である。
色彩と音楽
本作では、緑がイメージカラーとして使われている。
緑=水の中という事なんだろう。
オープニングシーンから、ずっと水の中にいるイメージを観客にも味合わせてくれる。
さらに明暗の使い方、特に”闇”の表現が秀逸である。
”闇”と聞くと必要以上にネガティブに聞こえてしまいがちだが、本作の”闇”は非常に優しく温かい印象を受ける。
暗くて美しい幻想。
そのダークファンタジーを昔の名曲の数々が彩る。
監督のギレルモ・デル・トロは闇の使い方もだけではなく、音の使い方も上手い。
スティーブン・ソダ―バークと組んだ『ミミック』でも音が非常に印象的な使い方をされていたが、本作でもそれは健在である。
場面の変化に活かされている。効果音を被せる事により、全く異なるシーンを上手く結合させている。
さらに声を出すことが出来ないイライザの声を、昔の名曲に代弁させている。
色彩と音楽で登場人物達の心の動きを表現しているのだが、これが見事な出来なんですよ。
いや、まさか半魚人の出て来るミュージカル映画だとは思わなかった(笑)
雑多な感想・印象に残ったシーン。
●主人公の首の傷……傷のつき方がラストシーンに繋がる。
●窓の外の水滴の動き……恋の表現・くっついた
●ストリックランドの奥さんとのベットシーン……「正常位でハッピーです」
●イライザの服装の変化……赤=恋・情熱の色。
●ストリックランドの車……車はだいたい本人を表わしている。
●主題歌を歌っていた女優……ある日突然失踪。
ついでに舞台となる1962年はまだ黒人差別があった時代。
(人種差別が公的に禁止されたのは1964年の公民権法制定から。キング牧師がノーベル平和賞を受賞したのは同じく1964年。マルコムXが暗殺されたのは1965年)
本作は『パンズラ・ビリンス』以降のデル・トロ監督の最高傑作と評されているらしい。
そういった難しい話はさて置き、「デートに観に行っても大丈夫な半魚人映画」なんてこの先、出て来るどうか分からない。
まだ一週間ほど公開されているので、まだ観てない人は一度映画館まで足を運んみてはいかがでしょうか?
総評・感想まとめ
総評:♡♡♡♡♡♡♡♡ 8/10
●キャラクター………◎
・それぞれのキャラクターの描き方が素晴らしい。
・
●ストーリー………◎
・非常に幻想的な「大人のための寓話」
・あんまり説教臭くないのがいい。
●カメラ・演出とう………◎
・全編にわたって、水の中にいるかのような雰囲気。
・ごちゃごちゃしているようで、凄く見やすいのは流石である。
●怪物……◎
・えらい男前な半魚人。 ・中の人ダグ・ジョーンズは着ぐるみアクターで食えそう。
・半魚人がちゃんと作ってある作品は珍しい。
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