今回紹介するのは、澤村 伊智(さわむら いち)のホラー小説「ぼぎわんが、来る」です。
2018年に「来る」というタイトルで実写映画化されてます。
作品紹介・概要
「ぼぎわんが、来る」
・著者:澤村 伊智(さわむら いち) ・レーベル:角川ホラー文庫
・375P
※映画化されている。映画のタイトルは「来る」である。なんだかスゲー検索で引っかからなそうなタイトルである。
「ぼぎわんが、来る」:あらすじ
内容(「BOOK」データベースより)
“あれ”が来たら、絶対に答えたり、入れたりしてはいかん―。幸せな新婚生活を送る田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。それ以降、秀樹の周囲で起こる部下の原因不明の怪我や不気味な電話などの怪異。一連の事象は亡き祖父が恐れた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのか。愛する家族を守るため、秀樹は比嘉真琴という女性霊能者を頼るが…!?全選考委員が大絶賛!第22回日本ホラー小説大賞“大賞
感想/ネタバレ有
作品のプロットは、「理不尽な呪いにかかった主人公が、呪いをとくためにジタバタあがく。その際に自分の故郷に伝わる恐ろしい言い伝えについて調べる。さらに、事態を解決するために霊能者に協力を依頼するが、呪いは想像以上に強くて……」といった、王道のプロット。
一昔前のネット怪談ではお馴染みのものである。「洒落怖」でよくあったようなやつ。
鈴木 光司の傑作ホラー「リング」に、途中まで凄く似ている印象を受けた。
「呪いの正体を探るため、外部の協力者を頼る」、その協力者が「探偵小説」における探偵役と、役割が一緒なのも共通している。
しかし、「リング」のパートナー・探偵役が「色んな事に詳しい大学の先生」だったのに対し、本作では「霊能者」である。その霊能者のキャラクターがかなり「ラノベ寄り」であり、個人的にはその辺が受け付けなかった。
物語の構成・語り手が、一部、二部、三部と移り変わっていく。
その語り手が変わることによって、物語の別の側面が浮かび上がっていく。
「ぼぎわん」なるものに呪われた、第一部の主人公が、視点を変えると、ただのDV気質の夫にしか見えなかったりと、その辺は面白い。
また、視点を変えて見えてくる事、その辺の「恨みつらみ」が怪物の正体に繋がってくるのも面白かった。
映画の方は観てないが、この怪物をどうやって、表現したのか気になる。「リング」同様に表現しやすいように魔改造さあれているかもしれないが、ヴィジュアルに訴えるように立体化して欲しい。
「ぼぎわん」が「ブギーマン」がなまったものだったんですね。
ミリタリーもので未確認機を「対象をボギーワンと呼称」みたいにやってるから、そっちだと思った。
最後はラノベ展開。
序盤・中盤は面白かった。
ただし、この呪い・怪物を倒す下り、霊能者のお姉さんが出て来たあたりから、ほぼラノベなんで、そこんとこはガッカリした。ちょっとばかし、漫画チックといいますか、最後の最後で、一気に嘘くさくなってしまっているように感じた。
「寺生まれのTさんが、破っ!やる」のは、ネットのネタでやってるから面白いのであって、出版社の印刷物で読むものじゃないんだよ。
なーんとなくだが、まだまだ、インタネットミームについての理解が進んでないんじゃないか?
ネットと出版社の印刷物を混同すると、どちらの文化にとってもいいことないと思う。
角川スニーカー文庫のレーベルはなくなってしまったが、最後の50Pは完全にそっちの方向である。
「なんだかラノベのキャラクターみたいだな……」と思ったんだが、「比嘉姉妹シリーズ」として続いているらしい。
う~ん、角川さん、ラノベのレーベルでスニーカー文庫残して、住み分けておいた方がよかったんじゃない?
なんとなく、角川ホラー文庫のイメージが、鈴木 光司や貴志 祐介で止まってるから、こんな悪い意味でのラノベぽいやつを読まされるとは思わなんだ。
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