今回紹介するのは「すばらしい新世界」です。
「すばらしい新世界」:作品概要
「すばらしい新世界」
・著者:オルダス・ハクスリー
・翻訳:大森望
・イラスト:水戸部功
・出版:早川書房・新訳版(2017/1/7)
「すばらしい新世界」:あらすじ
すべてを破壊した〝九年戦争〟の終結後に、暴力を排除し、共生・個性・安定をスローガンとする清潔で文明的な世界が形成された。人間は受精卵の段階から選別され、5つの階級に分けられて徹底的に管理・区別されていた。この美しい世界で孤独をかこっていた青年バーナードは、休暇で出かけた保護区で野人ジョンに出会う。すべてのディストピア小説の源流にして不朽の名作、新訳版!
~作品紹介より抜粋~
感想/ネタバレ有
映画「虐殺器官」公開に合わせて本屋で「ディストピア・フェア」なんてものが開催されていた。
うーん、凄い字面だぜ!
ジョージ・オーウェルの「1984」と並んでディストピア小説の金字塔と言われている作品です。
前に翻訳された物は図書館で借りて読んだのですが、「ディストピア・フェア」の開催にあわせて、新装版が出ていたのでそっちを購入。
ジョージ・オーウェルの「1984」年と併せて語られることが多いが、当ブログ管理人もそれに倣う。
「1984」がハードで‘恐怖‘によって管理するディストピア社会だとすると、ハクスリーが描く「素晴らしき新世界」はソフトで‘快楽‘によって支配するディストピア社会だ。
この世界では「ビックブラザーがあなたを見ている」的な標語も、いつまでも続く戦争も、相互監視社会でもない。物資が不足しているわけでも、腹を空かせた人間も出てこない。
家族は解体され、人間は人工子宮で、ボカノフスキー処置なるものを施されて、数十人規模の一卵性多胎児として生まれてくる。
生まれつき5つの階級に産み分けられ、その階級に一生留まる。条件反射を利用した教育によって、自分は幸せだと感じ、自分を取り巻く世界に一切の疑問を持たない。孤独は最低の悪徳として、「皆は皆の為に」とフリー・セックスが奨励される。たまに嫌な気分に陥った時はソーマと呼ばれる薬物を一粒とれば、何もかも忘れて幸せな気分になれる。スポーツは無駄にたくさんの用具を使う物に改良されて、消費をガンガンするようにコントロールされている。歴史はなかったことにされ、古典作品は破棄された。西暦の代わりに、T型フォードが生産された年を起源とされる、フォード歴が採用されて600年ぐらいたった世界が舞台だ。
『野人保護区』からきた野人のジョン。
α階級だが、生まれつき貧相な体に生まれついたせいで孤独をかこっていた青年バーナード。
恵まれすぎて、ふとした瞬間にこの世界に疑問を抱いた感覚映画作家のヘルムホルツ。
物語はこの集団の中の‘異質な他者‘である三人の男を中心に展開される。
ヒロイン的な女性も出てくるが、ヒロインと言うよりは、この「素晴らしい新世界」を象徴的な人物として、野人のジョンの頬を‘優しく思いっきり悪気もなく‘ぶん殴って唾を吐きかける。
そして物語中全てを知る立場である、ムスタファ・モンド。
彼もかつてはこの世界に疑問を持ったイレギュラーだったが、この素晴らしき新世界を守る法にまわってる。
恐らく大抵の読者は野人のジョンに感情移入して、つーかジョンの立ち位置でこの物語を眺めるはめになると思う。いやーもう、悲惨の一言なんだよね。バーナードとヘルムホルツはまだこの幸せな管理社会に居場所があるわけだ。なんだか日常に違和感を感じて、疎外感を感じてるけれど、自分を構成する価値観や、道徳なんかは「素晴らしき新世界」に属するわけだ。
しかしジョンにはそれがない。
自分を作っている価値観は、生まれ育った野人コミュニティのものだし、自分の言葉を作ったとも言える「シェイクスピア全集」を読んだことがある人間はだれもいない。自分を産んだかーちゃんは劇中半ばで死んじまうし、かーちゃんが死ぬ前に思い浮かべてたのは、昔の男ときた。
ジョンの孤独はうかがい知れないものがある。
それであの最後になるわけだ。
前に読んだ古い翻訳の方は、あすこまで直球な表現だったかなぁ~?(゚ロ゚;)!? その辺微妙に覚えてない。
うーん、前に読んだ訳も買おうかしら?
フリー・セックスとかソーマとか正直羨ましく感じると言うか、
(あ、そこ引いた顔しない)
ジョージ・オーウェルの『1984』の世界よりは、こっちのがまだ何とかなりそう。
この世界だと、システムの反逆者も殺されない。
ソーマを無理やりかがされて、説得されて終わり。
それでもなお逆らうなら、絶海の孤島に送られてそこで好きな研究をやって過ごせるらしい。
こんな世界なら立ち回りによっては、捻くれててても幸せに過ごせそうだなー( ・Д・) と思うあたり結構人並みに疲れてるのかもしれない。
言葉とか知識とか、歴史に対する考え方って大事。
例え自分が変わっていた事に気づいても、表面上はあくまでも「あ、俺、普通の範囲内っすよ!」て顔してなきゃいけないには現実世界でも一緒かもね。
感想まとめ。
けっこう読みやすい訳なんで、これを機に読んでみないか?
そして友達とディストピアについて熱く語らうのも悪くないかもよ(´・ω・`)
(※嫌です)
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