「ウィンド・リバー」感想・レビュー ~静かな怒りが漂う作品~

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サスペンス映画

今回紹介する作品は「ボーダー・ライン」とうで知られる脚本家テイラー・シェリダンが初監督を務めた作品「ウィンド・リバー」です。


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作品情報・キャスト・スタッフ

「ウィンド・リバー」

製作年:2017年

製作国:アメリカ

上映時間:107分

原題:「WIND RIVER」

監督:テイラー・シェリダン/「ボーダー・ライン」

製作:ベイジル・イヴァニク

出演ジェレミー・レナ―/「28週後」「メッセージ」

エリザベス・オルセン/「GODZILAL」(2014)

ジョン・バーンサル/「フューリー」「ウォーキング・デッド2」

グレアム・グリーン/「アンナチュラル」「バトル・オブ・アトランティス」

モンスター映画ファンとしては、なじみが深い面々が出ている(笑)

個人的にはグレアム・グリーン真面目な映画に出ている、それもけっこういい役なのが、新鮮だった(笑)

アサイラム製のパチモン映画「バトル・オブ・アトランティス」で、眠そうな顔をしている割には、超絶優秀だった司令官を演じていた人です。

 

B級映画に出ている時より、演技が上手くみえるから不思議だ……


予告編

 

「ウィンド・リバー」:あらすじ

「雪深い山奥の居留地「ウィンド・リバー」で若い女性の凍死体が見つかる。第一発見者のコリーは、FBIの新人捜査官ジェーンと共に捜査にのり出す。
しかし、二人は捜査を進めていくにつれて、この地に追いやられた人々の深い悲しみと絶望、さらには深い闇を知ることになる……」

 

「ウィンド・リバー」:感想/ネタバレ有

 

舞台は、アメリカの中西部ワイオミング州・“ウィンド・リバー”インディアン居留地。
主人公のベテランハンター、コリー・ランバートジェレミー・レナ―)は16歳の娘を殺された過去を持つ。


 ある日、家畜を襲うピューマを退治するために、探索を行っていたコリーは、少女の凍死体を発見する。少女は娘の親友のナタリーだった。
遺体は素足で凍傷があり、検死の結果、複数の男達からの暴行の痕跡が見られたが、直接の死因が

「冷たい空気を大量に吸い込んだ結果、肺が破裂した」

であるため、殺人事件として立件できない。

 そんな中FBIが、新米捜査官のジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)を派遣してくる。
頼りない新米捜査官を派遣してくることから、中央がインディアン居留地をどういう風に扱っているのか分かる。


警察権を持つのは自分だけということから、必死に努力するジェーン。

登場時は頼りなかったジェーンが、作中で成長していくさまも、本作の見どころの一つだ。

 

「言葉」ではなく「行動」で。

言葉にならない酷い現実があって、それに対して自分は果たすべき責任がある。
そういった「言葉」ではなく、「行動」の物語なんじゃないかな?

ウィンド・リバー居住区は、資源もなく、作物も育たない極寒の地。
その凍てつく大地で行われる捜査。
そこで見えてくるのは、許しがたい真実と、極寒の不毛の地に追いやられた人々の悲しみ。

主人公のコリーが、地元の不良青年に言った言葉。
「抜け出すチャンスはいくらでもあったはずだ。大学か軍隊か」
それを聞いて、何とも言えない表情をする不良青年。

ここを抜け出すには「物凄く努力する」「危険な仕事に腹をくくってつく」しかないのだ。
それを言うコリーが、決して傲慢な人物に見えないのは、演じているジェレミー・ミラーの演技によることが大きい。

 

 

作品から漂う暴力の雰囲気

この作品のっけから「暴力の臭い」とでもいうべきものが漂っている。

そういった濃厚な「暴力の臭い」がある割には、直接的な暴力描写は少ない。

あたり一面の雪景色はたいへん美しいが、同時に寒々しく、このなんの資源もない、豊かさとは無縁の大地に追いやられた人々の悲しみを感じる。

その白い、静かな大地で繰り広げられる、追跡行。

その過程で描写されるあまりにも理不尽な現実。

そうやって、「静かな絶望」をじっくりと描いた後に、突如として始まるバイオレンスシーン。

その描かれ方が、漂っていた「暴力の臭い」に対して、あんまりにも“あっさり”していてビックリする。

この作品では「視覚化された暴力」が、描かれるのは中盤と、クライマックスの二箇所しかない。それが、唐突に始まり、あっさりと終わる。

アクションシーンの、けれんみたっぷりの銃撃戦ではない。

発射された弾丸が、いかに簡単に命を奪い、人間が作り上げた物をあっさり破壊する。

そういった、「あまりにも唐突におとずれる死」を描く。

それが、開幕から描写された「静かな絶望」とあいまって、この作品の雰囲気を決定づけている。

この作品の銃撃戦はあっさりしている。

暴力シーンを、声高らかに「派手」に描くのではなく、「沈黙」で表現する事により、際立たせ、さらには「暴力」の本質を暴き立てているように感じた。


「人間は簡単に死んでしまう」
そういった、ともすれば忘れてしまう事を、テイラー・シェリダンは「沈黙」で描いた。
そういった「沈黙」に関しては、本来こちらも「沈黙」で答える、「言葉」ではなく「行動」で答えるべきなんだろうが、あいにくと私は、おしゃべりなため、今こうやって感想を書いている。

 

 

 

 

総評・感想まとめ

総評:☆☆☆☆☆☆☆☆  8/10

●【よかったところ】

・主演俳優が皆うまい。話に説得力がある。
・ロケーションがきれい

・静かだが暴力的な映像。

●【悪かったところ】

・とにかく後味が悪く、観終わってもすっきりしない。

・予告編よりも静かな映画なので、派手なバイオレンスものや、本格派サスペンスを期待すると、肩透かしを喰う。

 

●雑多な感想

・「暴力」を静かに徹底的に描いている。

・簡単に善悪の線引きをしてない。

・出演者の演技がよかった。 

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